コラム
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第7回は、久保田米僊(くぼたべいせん)です。米僊は、日本画家としてキャリアを始めながらも、記者、文筆家など、多彩な顔を…
図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回はきものづくりにも関わりの深い小袖雛形本についてご紹介したいと思います。(Fig.1)『正徳雛形』西川祐信著、1713(正徳3)年小袖雛形本(以下、雛形本)とは、その名の通り小袖の模様の雛形(見本)を一冊の本にしたものです。1666・67(寛文6・7)年の『御ひいなかた』をはじめ、江戸時代に多数出版されました。千總には、肉筆本や復刻本も含めると、40種を超える雛形本が所蔵されています。中でも『正徳雛形』(Fig.1)などは完品に乏しい同本の貴重な例として、雛形本研究において取り上げられてきま…
図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回は有職故実に関連する書籍のうち、武器・武具・甲冑類を図解した書籍や目利(めきき、鑑定)のガイドとして出版された書籍についてご紹介します。 端午の節句に五月飾をしつらえられた方も多いと思いますが、兜飾や鎧飾といった節句飾には、男の子が健やかに成長したくましく育つようにという願いが込められています。では、日本人が武具に対して持っているそのようなイメージはどこから来たのでしょうか。平安時代末から江戸時代に至るまでは、弱肉強食の戦乱の時代が続きました。そんな中武士の命を預かったのは身を守る…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第6回は、今尾景年(いまおけいねん)です。京都を代表する日本画家の1人であり、花鳥画の名手としても知られています。千總…
日増しに暖かくなり、思わず旅に出かけたくなる季節が近づいてきました。長く続いた外出制限も緩和されたことで、ゴールデンウィークの旅行計画を立てていらっしゃる方も多いかと思います。旅行先の情報を集めるとき、私たちは何をよすがとするでしょうか?現代の私たちはスマートフォンを片手にすることが多くなりましたが、紙のガイドブックを携えるという方もいらっしゃるでしょう。このようなガイドブックは江戸時代にはすでに存在していました。今回ご紹介する「名所図会」は、江戸時代後期を中心に出版された日本各地の観光ガイドブックともいうべき版本です。このような版本が出版された背景には、江戸時代を通じて行われた街道の整備と、…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第5回は、岸連山の息子で、岸派の日本画家の岸九岳(きしきゅうがく)です。九岳と千總とのビジネス…
千總の商売と文化を育んだ、京都の三条室町。当研究所では地域と千總の関係性への理解を深めるために、土地や建物、行事など町に関係する資料を調査しています。これまでの調査で、江戸時代に現在の千總ビルのほぼ同じ敷地にたっていた、京町家の建築資料が確認されました。そして、そのなかの江戸時代の図面と建築仕様書について取り上げる講演会「千總・西村家の町家図面を読み解く-近世京町家の造りと暮らし-」が、2月16日に開催されます。本コラムでは、講演会で取り上げる資料について少しご紹介したいと思います。 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、現在の千總本店は1989年に完成した鉄筋コンクリー…
株式会社千總(以下、千總)所蔵の版本には、今尾景年『景年花鳥画譜』をはじめとした多数の画譜、すなわち絵手本が含まれています(『景年花鳥画譜』についてはこちら)。図書紹介の第4回目は、それらの画譜のうち江戸時代に出版されたものを取り上げてご紹介します。 画譜の出版(Fig.1) 上田公長『公長画譜』4冊、1834(天保5)・1850(嘉永3)年 国内における画譜の出版は、江戸時代、中国からの画譜の輸入をきっかけとして始まりました。その出版の理由について、例えば1834(天保5)年刊『公長画譜』にはこう書かれています。 古人云ルアリ、画ハ声ナキノ詩也、詩ハ…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。第4回は、画家だけでなく国学者としても活動した、榊原文翠です。千總には、文翠が下絵を手掛けたとされる友禅裂が多く現存していますが、…
図書紹介の第3回目は、株式会社千總(以下、千總)に遺るちりめん本をご紹介します。 ちりめん本とはちりめん本と聞いて皆様はどんな本を思い浮かべるでしょうか。着物に親しまれている方なら、すぐさまあの凹凸が特徴的な生地の縮緬を想像されるかもしれませんが、それも間違いではありません。ちりめん本とは、浮世絵と同じ技法で印刷された紙に縮緬のような凹凸が出るように加工を施し、製本したものを指します。 ちりめん本の紙(crape paper, Fig.1)をご覧いただくと、細かな凹凸の筋が縦・横・斜め方向に走っているのがお分かりいただけると思います。挿絵は一般的な木版多色刷の浮…