コラム

図書紹介11:文様集(2) *会員限定*

本コラムシリーズでは、株式会社千總に遺る版本や図書類をテーマごとにピックアップしてご紹介しています。今回は前回に引き続き、紋や文様にまつわる書籍を取り上げます。 伊達紋の愉しさ Fig.1~3『百撰ひな形』出版年不詳『百撰ひな形』に掲載された着物の文様は、大柄で背の上部に大きなモチーフが配置されているのが特徴です。ここは本来であれば家紋を入れる紋所ですが、それよりもはるかに大きく華やかな文様が表されていることがお分かりいただけると思います。このような装飾を目的とした紋は伊達紋とよばれ、役者や市井の遊び人が好んで用いたものと考えられます*。それは家紋の役割である、家系や所属を示すという…

千總と近代画家9:梅村景山、芝千秋 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第9回は、梅村景山(うめむら けいざん)と芝千秋(しばせんしゅう)です。景山は1880(明治13)年頃、千秋は1892…

図書紹介10:文様集(1) *会員限定*

本コラムシリーズでは、株式会社千總に遺る版本や図書類をテーマごとにピックアップしてご紹介しています。今回から、染織業にもゆかりの深い「紋」にまつわる書籍を2回に分けてご紹介したいと思います。 皆さんはご自分の家紋をご存知でしょうか。黒留袖や紋付き袴など、和装では重要な意味を持つ家紋ですが、洋服が主流となった昨今は家紋になじむ機会は減る一方です。 家と紋Fig.1 〈江戸風俗図屏風〉 元禄期(1688~1704)頃しかし、京都のにぎわいを描いた洛中洛外図などには、暖簾を掲げた商家が立ち並ぶ様子がみられるものが少なくありません。それらの暖簾を見てみると多くが何らかの文様を表示し…

千總と近代画家8:谷口香嶠、竹内栖鳳 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第8回は、谷口香嶠(たにぐちこうきょう)と竹内栖鳳(たけうちせいほう)です。両名はいずれも、楳嶺四天王と称される、京都…

図書紹介9:女子用往来 *会員限定*

本コラムシリーズでは、株式会社千總に遺る版本や図書類をテーマごとにピックアップしてご紹介しています。9回目の今回は、女子用往来を取り上げます。 往来、とは書物の種類としては聞きなれない言葉ですが、現代でいう教科書に近い書物を近世には往来物(おうらいもの)と呼びました。この呼び名の由来は往信来信、すなわち手紙です。そもそも往来物が、中世の貴族の子弟を教育するための往復書簡の形から展開を広げたことによるもので、『庭訓往来』などがその代表的なものです。往来物は近世には寺子屋でテキストとして使われ、手紙以外にも文字の読み書き、社会、地理などさまざまな分野に関する知識を取り上げたものが出版され…

図書紹介8:有職故実書 *会員限定*

現代の私たちは、細かな言い伝えに則って着る服を選ぶようなことは、あまりありません。しかし、宮中では古来、性別や地位、年齢、季節などの条件によって装束や作法が細かく規定されていました。場面ごとの服装のコーディネートは口伝や故実(先例)として蓄積され、複雑化していきました。そこで、そうした故実に精通した専門家が求められるようになり、彼ら「有職者」によって儀式次第や場にふさわしい服装がまとめられた「有職故実書」が編纂されるようになりました。株式会社千總(以下、千總)に遺る版本のうちいくつかは、そのような有職者(有職故実家)がまとめた装束に関する書物です。図書紹介シリーズ8回目の今回は、これら有職装束…

千總と近代画家7:久保田米僊 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第7回は、久保田米僊(くぼたべいせん)です。米僊は、日本画家としてキャリアを始めながらも、記者、文筆家など、多彩な顔を…

図書紹介7:小袖雛形本 *会員限定*

図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回はきものづくりにも関わりの深い小袖雛形本についてご紹介したいと思います。(Fig.1)『正徳雛形』西川祐信著、1713(正徳3)年小袖雛形本(以下、雛形本)とは、その名の通り小袖の模様の雛形(見本)を一冊の本にしたものです。1666・67(寛文6・7)年の『御ひいなかた』をはじめ、江戸時代に多数出版されました。千總には、肉筆本や復刻本も含めると、40種を超える雛形本が所蔵されています。中でも『正徳雛形』(Fig.1)などは完品に乏しい同本の貴重な例として、雛形本研究において取り上げられてきま…

図書紹介6:武具図解本・目利本*会員限定*

図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回は有職故実に関連する書籍のうち、武器・武具・甲冑類を図解した書籍や目利(めきき、鑑定)のガイドとして出版された書籍についてご紹介します。 端午の節句に五月飾をしつらえられた方も多いと思いますが、兜飾や鎧飾といった節句飾には、男の子が健やかに成長したくましく育つようにという願いが込められています。では、日本人が武具に対して持っているそのようなイメージはどこから来たのでしょうか。平安時代末から江戸時代に至るまでは、弱肉強食の戦乱の時代が続きました。そんな中武士の命を預かったのは身を守る…

千總と近代画家6:今尾景年 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第6回は、今尾景年(いまおけいねん)です。京都を代表する日本画家の1人であり、花鳥画の名手としても知られています。千總…