調査報告

真宗大谷派 妙誓寺所蔵 染織資料調査

 江戸後期から明治頃にかけての千切屋總左衛門(千總の前身)が真宗大谷派の御用を請けていたことから、千總文化研究所では2019年度より真宗大谷派染織品資料調査を行っています。その一環として、2023年度は6月から8月にかけて、真宗大谷派妙誓寺に所蔵されている法衣装束等の染織資料の調査を行わせていただきました。 妙誓寺 外観  調査資料は31点あり、このうち袈裟類は22点、着物が1点、帯が2点、袴が2点、その他が4点でした。 調査風景  妙誓寺資料の特徴は、紋が縦横に整列する「居並び」の文様形式の袈裟が占める割合が高いことにあります。居並びの文様は現在の真宗…

桶出し絞りの道具調査

今、多くの伝統技術の継承が危ぶまれています。そしてその道具を作る技術も失われようとしています。多彩な染め分け表現ができる「桶出し絞り」もその一つです。千總文化研究所では、「桶出し絞り」の技術と道具について、ヒアリング調査進めています。 桶出絞りとは?上下に蓋がある桶を使用し、染める部分を桶の外縁に沿って細密に固定し、染めずに残す部分を桶の中に入れ、桶の上下の蓋を固く緊縛し、桶自体を染液につける技法です。   比較的大きな面積を、様々な形に多色に染め分けることができ、模様の輪郭に縫い目を施して絞るため、凹凸のある独特な風合いが特徴です 大正の終わ…

型友禅の絵刷資料の調査

明治時代以降、西村總左衛門の商店は、型紙を用いて文様を染める「型友禅」による商品を製造する、代表的な会社のひとつでした。その当時の盛況ぶりを伝える資料のひとつとして、同社には型友禅の見本の布、すなわち「型友禅裂」が所蔵されています。明治6年から昭和10年代までに製造された型友禅裂は1000点にのぼり、これまで様々な専門家により調査研究が行われてきました。なお、個々の型友禅裂については、現在連載中のTHE KYOTOでも紹介しております。 そして、その他に、型友禅の製造に関係する資料として、「絵刷」(えずり)が、同じく所蔵されています。 Fig.1 絵刷冊子の表紙(一例) &…

法衣装束の共同研究

《法服(紅鈍色緞子牡丹唐草地模様)への紋(丸ニ三ツ葵)仕様書》 千總文化研究所は、中世日本研究所、京都府京都文化博物館の研究者と共に法衣装束の調査を進めています。千總が「御装束師千切屋惣左衛門」として真宗大谷派宗務所(東本願寺)をはじめとする寺院の御用を務めていた歴史とともに、寺院の豊かな装束文化を研究するためです。千總には、図案や雛形、見本裂は遺されていますが、実際にどのような法衣装束を制作していたのかはほとんど分かっていませんでした。 最初の手がかりは、2010年に同朋大学安藤弥教授の研究チームが調査をし、千切屋惣左衛門が手がけた装束が残されていることが知られていた真宗大谷派姫路船場別院本…