お知らせ一覧
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第8回は、谷口香嶠(たにぐちこうきょう)と竹内栖鳳(たけうちせいほう)です。両名はいずれも、楳嶺四天王と称される、京都…
本コラムシリーズでは、株式会社千總に遺る版本や図書類をテーマごとにピックアップしてご紹介しています。9回目の今回は、女子用往来を取り上げます。 往来、とは書物の種類としては聞きなれない言葉ですが、現代でいう教科書に近い書物を近世には往来物(おうらいもの)と呼びました。この呼び名の由来は往信来信、すなわち手紙です。そもそも往来物が、中世の貴族の子弟を教育するための往復書簡の形から展開を広げたことによるもので、『庭訓往来』などがその代表的なものです。往来物は近世には寺子屋でテキストとして使われ、手紙以外にも文字の読み書き、社会、地理などさまざまな分野に関する知識を取り上げたものが出版され…
現在、京都市中京区に位置する御倉町は、平安時代は皇族や公家の邸宅として、鎌倉時代以降は一貫して商業都市として栄えました。御倉町が祇園会においては少将井神輿を舁く駕輿丁(かよちょう)たちを出す轅町(ながえちょう)としての役割をもち、また「やうゆう山」を出したとも伝えられているのも、御倉町が経済的に卓越した都市であったことを物語っています。千總の前身とも言える千切屋は、このような京都でも屈指の町勢を誇る御倉町に拠点を置き活動してきました。千切屋の法衣商としての側面は知られていますが、その他土倉として、公家の家来として、朝廷の役人としての姿をもちます。本会では、千…
現代の私たちは、細かな言い伝えに則って着る服を選ぶようなことは、あまりありません。しかし、宮中では古来、性別や地位、年齢、季節などの条件によって装束や作法が細かく規定されていました。場面ごとの服装のコーディネートは口伝や故実(先例)として蓄積され、複雑化していきました。そこで、そうした故実に精通した専門家が求められるようになり、彼ら「有職者」によって儀式次第や場にふさわしい服装がまとめられた「有職故実書」が編纂されるようになりました。株式会社千總(以下、千總)に遺る版本のうちいくつかは、そのような有職者(有職故実家)がまとめた装束に関する書物です。図書紹介シリーズ8回目の今回は、これら有職装束…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第7回は、久保田米僊(くぼたべいせん)です。米僊は、日本画家としてキャリアを始めながらも、記者、文筆家など、多彩な顔を…
当研究所では、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との覚書のもとに、産学連携事業として絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、過去の調査の様子は活動報告でご確認いただけます。)。調査は同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生さんが主体となって行われるもので、絵刷の撮影と調書の作成を実施しています。 授業の様子 このたび、本年度の前期の調査が実施されました。調査では、事前に同学科での撮影実習および当研究所による絵刷や型友禅に関する講義を行った上で、6月8日、15日、22日、7月13日の計…
図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回はきものづくりにも関わりの深い小袖雛形本についてご紹介したいと思います。(Fig.1)『正徳雛形』西川祐信著、1713(正徳3)年小袖雛形本(以下、雛形本)とは、その名の通り小袖の模様の雛形(見本)を一冊の本にしたものです。1666・67(寛文6・7)年の『御ひいなかた』をはじめ、江戸時代に多数出版されました。千總には、肉筆本や復刻本も含めると、40種を超える雛形本が所蔵されています。中でも『正徳雛形』(Fig.1)などは完品に乏しい同本の貴重な例として、雛形本研究において取り上げられてきま…
当研究所は、2021年度より株式会社千總(以下、千總)と京都芸術大学歴史遺産学科との連携のもと、千總所蔵資料の調査研究を進めています。2年目となる本年は初年度に引き続き、明治・大正期に作られた型友禅関連資料「絵刷」の撮影および文様・墨書の調査を実施し、さらに新たな試みとして、明治期の当主・12代西村總左衛門に宛てられた書簡の解読を行いました。こうした調査は同科の正課授業として実施されており、絵刷調査は同学科の増渕麻里耶氏の、書簡解読は木村栄美氏の、各ゼミに所属の学生により遂行されました(本年度の絵刷調査の様子はこちらからご確認いただけます)。 その中間報告会として、このたび2023年…
図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回は有職故実に関連する書籍のうち、武器・武具・甲冑類を図解した書籍や目利(めきき、鑑定)のガイドとして出版された書籍についてご紹介します。 端午の節句に五月飾をしつらえられた方も多いと思いますが、兜飾や鎧飾といった節句飾には、男の子が健やかに成長したくましく育つようにという願いが込められています。では、日本人が武具に対して持っているそのようなイメージはどこから来たのでしょうか。平安時代末から江戸時代に至るまでは、弱肉強食の戦乱の時代が続きました。そんな中武士の命を預かったのは身を守る…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第6回は、今尾景年(いまおけいねん)です。京都を代表する日本画家の1人であり、花鳥画の名手としても知られています。千總…