お知らせ一覧
本コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングスに所蔵される古書類をピックアップしています。前回の「裂貼交帖」に引き続き、今回も染織品のなかでも、特に更紗裂に関する冊子をご紹介します。 更紗見本帳更紗とは、インドを起源とする多色染めの木綿や、その影響を受けてアジアやヨーロッパで広く制作された染め物を指し、産地によってインド更紗、ジャワ更紗、和更紗などと呼び分けられます。各地の好みや風土に合わせ、草花、鳥獣、人物、幾何学文様など、実に多岐にわたるモチーフが文様として染められました。Fig.1,2 「更紗見本帳」1冊前回ご紹介した金襴緞子裂の張交帖のように、折帖に更紗の小さな裂が貼り込…
国の文化審議会は、2025 年3月21日に文部科学大臣へ答申を行い、株式会社千總ホールディングスが所蔵する以下の作品 1 件(2 点)が、新たに重要文化財に指定されることとなりました。 ・大津唐崎図(岸竹堂筆) 八曲一双 附 梅図(旧裏面貼付) 八曲一双 〈大津唐崎図〉八曲一双、岸竹堂筆、1875(明治 8)年、フィラデルフィア万博出品 附〈梅図〉(旧裏面貼付)八曲一双、岸竹堂筆、1875(明治 8)年〈大津唐崎図〉は千總とも縁の深い画家・岸竹堂による作品で、1875(明治 8)年に制作されました。今回の答申においては、本作が絵画の近代化を大きく進めた竹堂の代表作で…
2024年「きもの科学部」第6回を開催しました。今回のテーマは「デザイナーって何をつくる人?」講師は、株式会社千總で染織品のデザイナー・ディレクターをされている今井淳裕さんをお招きしました。前半の講義では、まず着物を作るときのステップを解説いただきました。着物のコンセプトやテーマを考えること、アイディアをイメージすることやどのような技術を用いてイメージを形にするか、そして着物を作るには様々な工程がありそれらが分業で成り立っていて、チームワークが大切であることなどをお話しいただきました。 さらに、「描画力」「構成力」「知識」「発想力」といったデザイナーに必要なスキルに触れた上で、実際に…
千總文化研究所では、千總が「御装束師 千切屋總左衛門」として法衣商を営んでいた歴史から、これまで真宗大谷派の寺院を中心とした染織品の調査研究を進めてきました。2024年度は、東本願寺法主・大谷家の染織品に焦点を当て、法主所用の染織品が伝来する真宗東派本願寺(通称:嵯峨本願寺)御所蔵の法衣装束の調査を行いました。本報告会ではこれらの染織資料と千總に遺る法衣制作資料を取り上げ、法衣を取り巻く衣文化の諸相を明らかにしたいと思います。本会では基調対談として、本願寺法主 大谷光道様にご登壇いただき、染織の専門家であり本調査にも携わっていただいた中世日本研究所所長 モニカ・ベーテ様とともに、法主の衣生活に…
本コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される古書・古典籍類からテーマに沿ったタイトルをピックアップしてご紹介しています。今回は染織品の裂(きれ)が貼り込まれた裂張交帖(きれはりまぜちょう)を2回にわたってご紹介します。 裂の賞玩Fig.1〈つれづれ切手鑑〉正倉院裂などに代表されるように、古来日本において舶来の布は珍らしく、また貴重なものでした。しかし布の宿命として、裁断されて細かな裂地となり、生活用具として劣化・消耗していくことは避けられません。今回ご紹介する裂張交帖には、細かな破片と化してもなお貴重なものとして舶来染織を愛でる、日本人の心の一端が表れ…
2024年「きもの科学部」第5回を開催しました。今回のテーマは「着物に描かれているものは?ー文学編ー」講師は、日本古典文学がご専門で大阪工業大学准教授の横山恵理先生をお招きしました。着物には古来さまざまな模様が描かれてきましたが、文学にまつわるものも少なくありません。風景の中に物語の一場面を再現したものや、漢詩や和歌などをそのまま文字で表したのもの、あるいはそうした文芸を暗示する動植物を表したものなどがあります。 今回は、日本古典文学の『枕草子』を軸に日本の自然観を学び、美しい自然からインスピレーションを得た和歌の世界を探求しました。前半のワークショップでは、江戸時代の小袖の観察をし…
第2回 「ウイスキーの香りと味わいの世界-日本のものづくり-」 福與 伸二 氏(サントリー株式会社 チーフブレンダー) ウイスキーは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダなどで発達し、その土地土地の気候・風土を反映した芳醇で複雑な香りと味わいを持つ酒として親しまれてきました。日本でウイスキーづくりが始まったのはおよそ100年前。現在のサントリーの前身である寿屋の社長・鳥井信治郎が、1923年に日本で初めての本格モルトウイスキー蒸溜所である「山崎蒸溜所」の建設に着手、1929年に最初の国産ウイスキー「サントリー白札」を誕生させました。 製麦、糖化…
2024年「きもの科学部」第4回を開催しました。今回のテーマは「着物に描かれているものは?ー植物編ー」です。講師は、植物学者で滋賀大学名誉教授の木島温夫先生をお招きしました。 着物には古くから、写実的にあるいは抽象的に様々な植物が描かれてきました。その多くに、植物の生態や姿形の特徴になぞらえて長寿や子孫繁栄などおめでたい意味が込められています。では、その植物たちはいつどこから日本にやってきて、どのような特徴を持っていて、人はどのように植物と共に生きてきたのか、知っているようで知らない植物の世界を人文科学と自然科学の視点から探究しました。前半は、植物がもたらした文化に着目し…
2024年「きもの科学部」第3回を開催しました。今回は、当研究所が教育プログラム開発の共同研究を進めている金沢大学から、吉武希実さん(金沢大学融合学域先導学類2年)が参加し、レビュー記事を作成してくれました。 ーーーーーー今回のワークショップのテーマは「五感を使って植物を観察しよう」でした。中学1年生から高校3年生までの7名が参加し、京都府立植物園を舞台に、五感を駆使して植物観察を行い、自然の魅力を体感しました。 前半は植物園ガイドの立花さんに15,000平方メートルもの広大な園内の一部を案内していただきました。植物の特徴や生活への応用…
本コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される近世・近代の図書資料から、各テーマに沿ったタイトルをピックアップしてご紹介します。今回は明治時代に出版された画譜類をご紹介します。 江戸時代の名残江戸時代に出版された画譜については、本シリーズ第4回「江戸時代の画譜」にてご紹介しました。画譜は絵の教科書として江戸時代を通じて多数出されましたが、近代にも(あるいは現代にも)盛んに出版されます。しかし、そのすべてが新作というわけではなく、江戸時代の絵師の作品を出版したものも多くみられます。 Fig….