お知らせ一覧

染織品紹介8:中国の繍と織 *会員限定*

本コラムシリーズは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される染織品をとおして日本のさまざまな染織文化をご紹介しています。今回は隣国である中国からもたらされた裂類を例に、明治から大正期における海外染織品の受容について考えてみましょう。 近代の千總において、海外のデザインは次々と売り出される型友禅の柄のデザインソースとして重要なものでした。西洋の雑誌や手工芸品のみならず、中東やアジア諸国の染織デザインも型友禅の模様として取り入れられました。日本の染織やデザインは古くから絶えず中国文化の影響を受けてきましたが、近代に入り、西洋列強の視座を通じたある種超越的な視線も中国の文物に…

展覧会「きもののヒミツ 友禅のうまれるところ」 への作品貸出に係る調査協力をしました

当研究所は、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)の所蔵品の保存管理業務の一環として、千總ギャラリーの展覧会実施や他館への貸出時における、所蔵品調査および企画に対する協力を行っています。2026年度は昨年度に続き、千總創業470年記念事業のひとつである「きもののヒミツ 友禅のうまれるところ」の巡回展が新潟県立近代美術館で開催されており(会期は2026年9月12日から11月15日まで)、当研究所では去る8月に、その貸出に伴う調査協力を行いました。   所蔵品(作品)は温湿度を調整し、防虫対策を徹底した収蔵庫に保管してあります。そして、作品ごとに調書を作成し、サイズや使用さ…

第二次世界大戦下の工芸技術保護関係資料に関する共同調査の実施

当研究所では東京文化財研究所と覚書を結び、2024年度より第二次世界大戦下の工芸技術保護に関係する所蔵資料の調査を実施しています。 東京文化財研究所の先行研究(註1)によると、昭和15(1940)年に公布された奢侈品等製造販売制限規則(昭和15年7月6日商工省、農林省令第2号/通称七・七禁令)が、昭和25(1950)年に制定された文化財保護法における無形文化財、特に工芸技術保護の枠組み形成に影響を与えた可能性が指摘されており、本調査はその実態解明の一環として実施されました。 本調査では、千總に現存する、奢侈品等製造販売制限規則の影響で制度化された、芸術及び技術保持資格の認定…

しまつの文化―庭園内の土蔵および地蔵堂の調査

京都・三条通に面した千總本社ビルの裏側には中庭があります。この中庭は当ビルが建て替えられる以前から存在していますが、そのなかにある土蔵と地蔵堂も、折々に手を加えながら同様に引き継がれてきたものです。現在、土蔵は主だって使用されていませんが、地蔵堂と合わせて、往時の商家の面影を今に伝えています。これまで当研究所では、本社ビルの敷地の歴史に関する調査や講演会を実施してまいりましたが、このたびはこの2棟の建築に関する調査の一環として、京都工芸繊維大学デザイン・建築学系のマルティネス准教授とともに、現状調査を行いました。 建築の概要 土蔵(北面) 土蔵は中庭なかの南西側、地蔵堂はそ…

染織品紹介7:腰巻の意匠 *会員限定*

本コラムシリーズは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される染織品をとおして日本の様々な染織文化をお届けしています。前回の帷子に引き続き、夏の衣裳として、今回は腰巻(こしまき)についてご紹介します。 腰巻とは、室町時代から江戸時代における武家女性の夏の礼装で、前回コラムでご紹介した帷子の上に着用されました。元々は小袖と同じ形で生地や模様も大差ありませんでしたが、年代が降るごとに専用の形式に変化していきました。着用の仕方も、初期は打掛のように間着の上に着け、両肩を脱いで腰に巻き付ける形で着用されていました。〈お市の方(浅井長政夫人)像〉(重要文化財、持明院蔵)などに描かれ…

染織品紹介6:帷子の意匠 *会員限定*

当コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングスに所蔵される染織品から日本の染織文化をご紹介しています。 年々暑さを増す、日本の夏。江戸時代も、小氷期と呼ばれる比較的寒冷な気候であったとはいえ、時には現代のような猛暑にみまわれることがあったといいます*1。現在我々が使う便利な冷房設備を持たない江戸時代の人々は、夏にどんな衣服を着て過ごしていたのでしょうか。 夏に着るものといえば、浴衣を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。「浴」びるに「衣」と書いて「ゆかた」と読みますが、これは「湯帷子(ゆかたびら)」という言葉が元になっています。帷子とは麻でできた夏用の単衣(裏地のないき…

染織品紹介5:寿ぎを尽くす文様 *会員限定*

異動や門出など、春は人生の移り変わりの季節です。そのような節目を祝い、前途が明るくあるようにと願う気持ちは古くから人々の間で共有されてきました。そうした思いを目に見えるよう形にしたものが、吉祥文様です。おめでたいモチーフをたくさん組み合わせることで、喜びを重ねるさまを表現し、古来日本では衣服や調度品など人々の身の回りの品を飾ってきました。代表的なものでは、松竹梅や鶴亀などは日本人が誰しも知るモチーフでしょう。 現代でもきものによく表される吉祥模様としては、宝尽くしがあります。吉祥というテーマに類するモチーフを集めた、色々なおめでたさを表す宝物が組み合わされた模様です。しかしその中身に…

染織品紹介4:遠山文様と刺納 *会員限定*

Fig.1 〈遠山文様袈裟裂〉大正時代(20世紀)山々が折り重なるように連なった情景を文様化したものを、遠山文様といいます。株式会社千總ホールディングスが所蔵する〈遠山文様袈裟裂〉(Fig.1)はその遠山文様が表された裂地(きれじ)です。一見するとただの織物のようですが、生地をよく見てみると特徴があることに気づきます。 生地の表面を拡大してみると、通常の織物とは異なり、筋状の凹凸が入っており、凹の部分には所々に紺色の糸が見えます(Fig.2,3)。 Fig.2,3 〈遠山文様袈裟裂〉生地拡大 通常、織物は経糸と緯糸が規則的に交差することで形作られ、ときには文様を織り出します…

染織品紹介3:小袖の黒 *会員限定*

 本コラムは株式会社千總ホールディングスに所蔵される染織資料から、日本の染織にまつわる話題をお届けします。今回は江戸時代の小袖に用いられる「黒」についてご紹介します。  染織品は一般的に、絵画や彫刻などの作品に比べて脆弱であるといわれます。人々が生活の中で身に付けたきものや小物などは汗やスレ、破れなどの危険に常にさらされていました。現代までその姿をとどめている小袖や服飾品は、大切に守り伝えられてきた類まれな例であるといえます。 展覧会などで小袖を観るとき、糸のほつれや生地の破れに気が付かれた方も少なくないでしょう。そのような損傷のなかで、特に多いのが黒く染められた糸や生地の劣化です。…

染織品紹介2:江戸時代前期の文様 *会員限定*

前回は江戸時代前期の染織品における色彩の一例をご覧いただきました。しかし小袖は色だけで成り立つものではありません。今回は小袖の流行にも関わりの深い「文様」と「技法」のつながりを見ていきたいと思います。雛形本にみる文様17世紀はじめから中ごろにかけて、どのような模様の小袖が作られていたのかについては、雛形本(雛形本の概要については図書紹介コラム参照)を見てみるのがわかりやすいでしょう。  Fig.1,2 『御ひながた』原本1667(寛文7)年(山田繁太郎、1905[明治38]年復刻)現存する最古の雛形本である『御ひながた』には、小袖の背面に様々な文様が描かれています。本の挿絵として見る…