お知らせ一覧
千總文化研究所では、千總が「御装束師 千切屋總左衛門」として法衣商を営んでいた歴史から、これまで真宗大谷派の寺院を中心とした染織品の調査研究を進めてきました。2024年度は、東本願寺法主・大谷家の染織品に焦点を当て、法主所用の染織品が伝来する真宗東派本願寺(通称:嵯峨本願寺)御所蔵の法衣装束の調査を行いました。本報告会ではこれらの染織資料と千總に遺る法衣制作資料を取り上げ、法衣を取り巻く衣文化の諸相を明らかにしたいと思います。本会では基調対談として、本願寺法主 大谷光道様にご登壇いただき、染織の専門家であり本調査にも携わっていただいた中世日本研究所所長 モニカ・ベーテ様とともに、法主の衣生活に…
本コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される古書・古典籍類からテーマに沿ったタイトルをピックアップしてご紹介しています。今回は染織品の裂(きれ)が貼り込まれた裂張交帖(きれはりまぜちょう)を2回にわたってご紹介します。 裂の賞玩Fig.1〈つれづれ切手鑑〉正倉院裂などに代表されるように、古来日本において舶来の布は珍らしく、また貴重なものでした。しかし布の宿命として、裁断されて細かな裂地となり、生活用具として劣化・消耗していくことは避けられません。今回ご紹介する裂張交帖には、細かな破片と化してもなお貴重なものとして舶来染織を愛でる、日本人の心の一端が表れ…
2024年「きもの科学部」第5回を開催しました。今回のテーマは「着物に描かれているものは?ー文学編ー」講師は、日本古典文学がご専門で大阪工業大学准教授の横山恵理先生をお招きしました。着物には古来さまざまな模様が描かれてきましたが、文学にまつわるものも少なくありません。風景の中に物語の一場面を再現したものや、漢詩や和歌などをそのまま文字で表したのもの、あるいはそうした文芸を暗示する動植物を表したものなどがあります。 今回は、日本古典文学の『枕草子』を軸に日本の自然観を学び、美しい自然からインスピレーションを得た和歌の世界を探求しました。前半のワークショップでは、江戸時代の小袖の観察をし…
第2回 「ウイスキーの香りと味わいの世界-日本のものづくり-」 福與 伸二 氏(サントリー株式会社 チーフブレンダー) ウイスキーは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダなどで発達し、その土地土地の気候・風土を反映した芳醇で複雑な香りと味わいを持つ酒として親しまれてきました。日本でウイスキーづくりが始まったのはおよそ100年前。現在のサントリーの前身である寿屋の社長・鳥井信治郎が、1923年に日本で初めての本格モルトウイスキー蒸溜所である「山崎蒸溜所」の建設に着手、1929年に最初の国産ウイスキー「サントリー白札」を誕生させました。 製麦、糖化…
2024年「きもの科学部」第4回を開催しました。今回のテーマは「着物に描かれているものは?ー植物編ー」です。講師は、植物学者で滋賀大学名誉教授の木島温夫先生をお招きしました。 着物には古くから、写実的にあるいは抽象的に様々な植物が描かれてきました。その多くに、植物の生態や姿形の特徴になぞらえて長寿や子孫繁栄などおめでたい意味が込められています。では、その植物たちはいつどこから日本にやってきて、どのような特徴を持っていて、人はどのように植物と共に生きてきたのか、知っているようで知らない植物の世界を人文科学と自然科学の視点から探究しました。前半は、植物がもたらした文化に着目し…
2024年「きもの科学部」第3回を開催しました。今回は、当研究所が教育プログラム開発の共同研究を進めている金沢大学から、吉武希実さん(金沢大学融合学域先導学類2年)が参加し、レビュー記事を作成してくれました。 ーーーーーー今回のワークショップのテーマは「五感を使って植物を観察しよう」でした。中学1年生から高校3年生までの7名が参加し、京都府立植物園を舞台に、五感を駆使して植物観察を行い、自然の魅力を体感しました。 前半は植物園ガイドの立花さんに15,000平方メートルもの広大な園内の一部を案内していただきました。植物の特徴や生活への応用…
本コラムシリーズでは、株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される近世・近代の図書資料から、各テーマに沿ったタイトルをピックアップしてご紹介します。今回は明治時代に出版された画譜類をご紹介します。 江戸時代の名残江戸時代に出版された画譜については、本シリーズ第4回「江戸時代の画譜」にてご紹介しました。画譜は絵の教科書として江戸時代を通じて多数出されましたが、近代にも(あるいは現代にも)盛んに出版されます。しかし、そのすべてが新作というわけではなく、江戸時代の絵師の作品を出版したものも多くみられます。 Fig….
「千總の友禅」が始まったのは幕末と言われています。明治時代以降その製造は本格化。合成染料や型友禅染(手捺染)といった、材料や技術の革新を重ねて販路が拡大され、やがて友禅製品は現代に至る千總の主力商品となりました。1893(明治26)年に、12代当主・西村總左衛門が緑綬褒章を授与された際の文辞には、「夙に意を家業に励まし世に千総(ママ)友禅の名称を馳せ販売益広まり(略)」とあり、当時から「千總友禅」と認識されていたことがわかります。 こうした千總友禅の発展の軌跡を示すのが、友禅見本裂の資料群、通称「友禅軸」です。友禅軸とは、1873(明治6)年以降に千總で製作された友禅見本裂を1~4枚をまとめて…
2024年「きもの科学部」第1回、第2回を10月に開催しました。 まずは第1回、テーマは「色の素って、なに?」です。中学1年生から高校3年生まで9名が集まり、「色」について多角的に学びました。講師は、一関工業高等専門学校から小林淳哉教授をお招きしました。 前半の講義では、・なぜ色が見えるのだろう?~リンゴは赤い、海は青い~・色って何からできているんだろう?~「染める」と「塗る」~・色がもつメッセージ~色の表現、生活の中の色~上記の内容で、身の回りにある自然界の色、人工的な色、がどのように成り立っているのか、を考えました。 後半のワークショップでは、ペーパークロマト…
嵯峨本願寺は京都・嵯峨に位置する寺院で、東本願寺法主で旧華族・大谷伯爵家の蔵品を今に伝えています。なかでも染織品は近世後期以降の大谷家歴代が着用された多数の法衣装束からなり、これまで明らかにされることのなかった東本願寺における法主衣体および法服*1の実態を探るに欠かせない資料です。 当研究所では2024年4月より嵯峨本願寺に所蔵される染織品の調査を行っています。株式会社千總ホールディングスの前身である法衣商・千切屋惣左衛門が、近世後期から近代にかけて大谷家の御用を行ったことが分かっています*2が、実際の製品や制作規模など不明な点が多く残されています。今回の調査において、千切屋惣左衛…