お知らせ一覧

産学連携事業:2023年前期の絵刷調査の実施

当研究所では、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との覚書のもとに、産学連携事業として絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、過去の調査の様子は活動報告でご確認いただけます。)。調査は同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生さんが主体となって行われるもので、絵刷の撮影と調書の作成を実施しています。 授業の様子    このたび、本年度の前期の調査が実施されました。調査では、事前に同学科での撮影実習および当研究所による絵刷や型友禅に関する講義を行った上で、6月8日、15日、22日、7月13日の計…

図書紹介7:小袖雛形本 *会員限定*

図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回はきものづくりにも関わりの深い小袖雛形本についてご紹介したいと思います。(Fig.1)『正徳雛形』西川祐信著、1713(正徳3)年小袖雛形本(以下、雛形本)とは、その名の通り小袖の模様の雛形(見本)を一冊の本にしたものです。1666・67(寛文6・7)年の『御ひいなかた』をはじめ、江戸時代に多数出版されました。千總には、肉筆本や復刻本も含めると、40種を超える雛形本が所蔵されています。中でも『正徳雛形』(Fig.1)などは完品に乏しい同本の貴重な例として、雛形本研究において取り上げられてきま…

産学連携スタートアップ事業 令和4年度成果報告会

当研究所は、2021年度より株式会社千總(以下、千總)と京都芸術大学歴史遺産学科との連携のもと、千總所蔵資料の調査研究を進めています。2年目となる本年は初年度に引き続き、明治・大正期に作られた型友禅関連資料「絵刷」の撮影および文様・墨書の調査を実施し、さらに新たな試みとして、明治期の当主・12代西村總左衛門に宛てられた書簡の解読を行いました。こうした調査は同科の正課授業として実施されており、絵刷調査は同学科の増渕麻里耶氏の、書簡解読は木村栄美氏の、各ゼミに所属の学生により遂行されました(本年度の絵刷調査の様子はこちらからご確認いただけます)。 その中間報告会として、このたび2023年…

図書紹介6:武具図解本・目利本*会員限定*

図書紹介コラムでは、株式会社千總所蔵(以下、千總)の図書資料を各回のテーマに分けてご紹介しています。今回は有職故実に関連する書籍のうち、武器・武具・甲冑類を図解した書籍や目利(めきき、鑑定)のガイドとして出版された書籍についてご紹介します。 端午の節句に五月飾をしつらえられた方も多いと思いますが、兜飾や鎧飾といった節句飾には、男の子が健やかに成長したくましく育つようにという願いが込められています。では、日本人が武具に対して持っているそのようなイメージはどこから来たのでしょうか。平安時代末から江戸時代に至るまでは、弱肉強食の戦乱の時代が続きました。そんな中武士の命を預かったのは身を守る…

千總と近代画家6:今尾景年 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。 第6回は、今尾景年(いまおけいねん)です。京都を代表する日本画家の1人であり、花鳥画の名手としても知られています。千總…

「西村總左衛門家の活動」ページの更新のお知らせ

本日より「西村總左衛門家の活動」のページに、12代西村總左衛門の略年譜を追加しました。略年譜には、株式会社千總の所蔵品や文献資料の調査を通じて明らかとなった、12代西村總左衛門の生涯の活動が掲載されています。各活動や出来事を、①12代西村總左衛門個人および家族に関する事項、②千總の会社全体および社員の活動、各種博覧会などにおける受賞、さらに③現存する所蔵品の出陳や購入に関する事項に分類しました。現在も12代西村總左衛門の活動については調査中のために、今後も随時更新です。本略年譜が、12代西村總左衛門の活動の背景の解明だけでなく、近代の美術工芸に関する研究促進の一助となりましたら幸いです。&nb…

調査報告会「井波別院瑞泉寺所蔵 法衣装束・荘厳具について」

千總文化研究所では、千總の前身となる千切屋が東本願寺の法衣装束を商っていたことから、2018年より真宗大谷派にまつわる染織資料の調査を進めています。2022年度は富山県南砺市の真宗大谷派井波別院瑞泉寺に所蔵される染織資料326点の調査を行いました。3月3日に開催した調査報告会では、本調査で確認された資料の概要や、そこから明らかになる井波別院瑞泉寺所蔵法衣装束・荘厳具(打敷や水引などの堂内装飾具)の特質についてご報告いたしました。報告会の記録動画は、会員ページよりご視聴いただけます。 [開催概要]日時:2023年3月3日(金)午後2時~4時20分開催形式:会場参加(株式会社千總本社5階…

大阪教育大学附属天王寺中学校✖️千總文化研究所  ~着物を題材とした教科横断型授業~

大阪教育大学附属天王寺中学校様からご依頼いただき、着物を題材とした教科横断型授業の取り組みに参画しました。授業は、2年生の美術科、理科、国語科、家庭科の時間で全10回にわたり、着物のデザインと色、着物の着こなし等を、観察、実演、実習を交えて行われました。千總文化研究所は、美術科と理科の時間に千總のデザイナーと職人を講師として召喚し、実習のための着物、染色見本、染色材料と道具等を提供しました。1)美術科① 着物を「見つめる」、デザイナーの仕事を知る2)理科①色づくりについて職人から学ぶ3)理科②見本の色を再現する4)国語科①言葉の意味の違いに気付く5)国語科②名も無き色に名前を付ける6)美術科②…

図書紹介5:名所図会 *会員限定*

日増しに暖かくなり、思わず旅に出かけたくなる季節が近づいてきました。長く続いた外出制限も緩和されたことで、ゴールデンウィークの旅行計画を立てていらっしゃる方も多いかと思います。旅行先の情報を集めるとき、私たちは何をよすがとするでしょうか?現代の私たちはスマートフォンを片手にすることが多くなりましたが、紙のガイドブックを携えるという方もいらっしゃるでしょう。このようなガイドブックは江戸時代にはすでに存在していました。今回ご紹介する「名所図会」は、江戸時代後期を中心に出版された日本各地の観光ガイドブックともいうべき版本です。このような版本が出版された背景には、江戸時代を通じて行われた街道の整備と、…

千總と近代画家5:岸九岳、岸派の画家 *会員限定*

明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。   第5回は、岸連山の息子で、岸派の日本画家の岸九岳(きしきゅうがく)です。九岳と千總とのビジネス…