コラム
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、様々な文書資料でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークに対する理解を改めて深めることを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください)。第3回は、近代大和絵の画家である川辺御楯と、岸派の画家の森春岳です。千總に現存する資料から、御楯は友禅下絵の提供…
図書紹介第1回「千總と近世文化 」に続き、今回は団扇本(うちわぼん)のご紹介をいたします。残暑の厳しい折、お手元の団扇で扇ぎながら、近代の団扇デザインに触れてみるのはいかがでしょうか。 千總の団扇本株式会社千總では多数の図書資料を所蔵していることは前回ご紹介したとおりですが、その中でもまとまった一群を形成しているのがこの団扇本コレクションです。蒸し暑い日本の夏を過ごす上で欠かせない団扇ですが、団扇本はそんな団扇のデザインをまとめたスクラップ帳を指します。 団扇の形をした絵といえば室町時代の水墨画家・雪舟が描いた「団扇形倣古図」が著名ですが、団扇本に集められた団扇…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。第2回は、近代の京都画壇を代表する画家のひとりである望月玉泉と、京都における洋画・油絵の草創期を切り拓いた画家の田村宗立です。&n…
千總では、友禅染の図案や法衣類の制作資料とするために集められたと思しき多数の図書を所蔵しています。その具体的な内訳については現在調査を進めている最中ですが、多くは江戸時代から明治時代にかけて出版されたもので、染織関連の版本資料として代表的な小袖雛形本をはじめとして、浮世草子、俳諧書、画手本、近代の博覧会図録など、多種多様な図書が確認されています。 とくに版本資料は近世の文化を広く網羅するラインナップとなっており、これらの図書から得られた知識が千總のものづくりに活かされたことが想像されます。千總に所蔵される図書資料を大正から戦前頃にかけてまとめた目録(『図書部購入台帳』)のうち、入手日…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。そして、両者の繋がりは、千總に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。そこで本コラムではシリーズで、千總所蔵の文書のひとつである近代の決算報告書類に登場する画家を紹介します。 千總に現存する近代の決算報告書類は、1876年(明治9)から1879年(明治12)並びに1881年(明治14)から1922年(大正11)までの間、概ね毎年上(前)半期・下(後)半期に分けて作成されたもので、各報告書類の記載項目と名称(「勘定」、「精算表…
明治5(1872)年に、西村總左衛門家の12代当主となるべく迎えられたのが、三国直篤(みくになおあつ、1855~1935)でした。直篤は、越前出身の儒学者・三国幽眠(みくにゆうみん、1810~1896)の三男です。幽眠は、天保3(1832)年に上洛し、天保8年以降は鷹司家の儒官を務めるなど、活動の拠点は京都にありました。 これまで、西村家に入った後の直篤(12代西村)は、家族行事において幽眠と交流を持っていたことが、千總に現存する詩画軸などで確認することができていました。ところが、このほど調査を進めている幽眠の書簡によると、家族行事だけではなく12代西村の呉服商売においても、関わりが…
明治期の京都において、工芸品製作は「図案」と「意匠」のもとに成立するとの考えがあったとも言われていました。千總は図案だけでなく、意匠の発展にもかかわった記録があり、またその交流の一端が刺繍絵画において確認できます。 Fig.1 図案:波図 Fig.2 友禅裂:波図 現在、千總ギャラリーでは、明治大正期に制作された友禅裂が、時系列に沿って展示されています。 こうした友禅裂や製品の制作にあたって行われていたのが、図案の作成(Fig.1、Fig.2)でした。図案とは、染織品や陶磁器などの工芸品のデザインや模様などを予め図に表現したものを指します。千總には肉筆の図案集が複数冊…
明治時代以降、千總は三越との商売を盛んに行ってきました。千總ギャラリーでは8月末から型友禅を中心に両者の関係を示す作品の展示を予定しています。それに合わせて、今回は関連する作品を紹介します。 天鵞絨友禅〈茶運び婦人〉天鵞絨友禅 1額 縦96.6cm×横63.3cm×厚み2.0cm(額縁含む)明治41(1908)年頃 千總蔵内容については、「会員ページ」でご紹介しています。
友禅染めには大きく分けると手描き友禅と型友禅があります。型友禅は模様を彫り出した型紙を生地にあてて、型紙の上から刷毛で染料を擦り込んだり、染料を混ぜた写糊をヘラで塗布することで模様の染色をします。染め上がった時の模様の形や色彩表現を大きく左右するのが型紙の彫刻です。 手描き友禅と同様に、まずは図案の製作から始まります。 一つの模様に使用される型紙の枚数は、主に模様の複雑さ、色数によって決まります。この「孔雀百花模様」では64枚の型紙が用いられました。着色図案をもとに、企画担当者、型彫刻の職人と染色工房がどのような型を彫刻し、模様を表現するかを検討します。例えば、牡丹のやわら…
3月末以降、桜前線は日本列島を北上し、現在は北海道の五稜郭などで桜が見ごろを迎えています。桜前線はソメイヨシノの開花予想を伝えるものですが、日本にはソメイヨシノ以外にも100種以上の桜が存在しています。今回ご紹介するのは、そうした桜の絵を収録した画帖『桜花真冩』です。 内容については、「会員ページ」でご紹介しています。