お知らせ一覧
当研究所では2021年度から株式会社千總(以下、千總)に寄贈された絵刷(えずり)調査を、京都芸術大学歴史遺産学科との産学連携事業のもとに実施しています(事業の詳細はこちらをご覧ください)。本年度の後期調査は、10月6日か11月17日の毎週木曜日に実施されました。調査は正課授業の一環として行われ、同学科の増渕准教授率いる文化財科学ゼミに所属する3回生5名および4回生1名の他、2回生6名および修士課程学生1名の合計12名が参加しました。 後期調査では、前期と同様の絵刷の撮影に加えて、調書の作成が行われました。本事業はデジタルアーカイブ化を最終的な目的としているために、この調査を通して得ら…
千總文化研究所が今年の10月より開催しております中学生向け文化プログラム「きもの科学部〜きものを科学的に探求しよう〜」が産経新聞(2022年11月21日付)にて紹介されました。プログラムの内容は、活動紹介にてご覧いただけます。ご関心をお寄せいただけましたら幸いです。
図書紹介の第3回目は、株式会社千總(以下、千總)に遺るちりめん本をご紹介します。 ちりめん本とはちりめん本と聞いて皆様はどんな本を思い浮かべるでしょうか。着物に親しまれている方なら、すぐさまあの凹凸が特徴的な生地の縮緬を想像されるかもしれませんが、それも間違いではありません。ちりめん本とは、浮世絵と同じ技法で印刷された紙に縮緬のような凹凸が出るように加工を施し、製本したものを指します。 ちりめん本の紙(crape paper, Fig.1)をご覧いただくと、細かな凹凸の筋が縦・横・斜め方向に走っているのがお分かりいただけると思います。挿絵は一般的な木版多色刷の浮…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、様々な文書資料でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークに対する理解を改めて深めることを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください)。第3回は、近代大和絵の画家である川辺御楯と、岸派の画家の森春岳です。千總に現存する資料から、御楯は友禅下絵の提供…
きもの科学部〜「きもの」を科学的に探究しよう〜 令和4年度文化庁「地域活動推進事業及び地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」のもと、千總の有形・無形の文化財を活用した文化教育プログラムを京都市内の中学生のための倶楽部として実施致します。京都には、染織、陶芸、漆芸をはじめ沢山の伝統技術があり、洗練された美しい工芸品が作られてきました。そこには京都が長い歴史の中で育んできた豊かな文化的背景と、先人たちが経験と感性によって磨き上げてきたクリエイティビティと英知が詰まっています。「きもの科学部」では、日本文学、農学、工学、染色デザイン等の専門家が倶楽部の指導者となり、着物に描かれた植物や和歌、…
図書紹介第1回「千總と近世文化 」に続き、今回は団扇本(うちわぼん)のご紹介をいたします。残暑の厳しい折、お手元の団扇で扇ぎながら、近代の団扇デザインに触れてみるのはいかがでしょうか。 千總の団扇本株式会社千總では多数の図書資料を所蔵していることは前回ご紹介したとおりですが、その中でもまとまった一群を形成しているのがこの団扇本コレクションです。蒸し暑い日本の夏を過ごす上で欠かせない団扇ですが、団扇本はそんな団扇のデザインをまとめたスクラップ帳を指します。 団扇の形をした絵といえば室町時代の水墨画家・雪舟が描いた「団扇形倣古図」が著名ですが、団扇本に集められた団扇…
当研究所では2021年度から株式会社千總(以下、千總)に寄贈された絵刷(えずり)の調査を、京都芸術大学歴史遺産学科との産学連携事業のもとに実施しています(事業の詳細はこちらをご覧ください)。絵刷とは、型紙を用いて文様が紙に摺り出されたもので、型友禅をつくる工程において、職人による型紙の彫り具合(彫口)の確認や、型紙管理者の見本などの用途でもちいられるものです。本調査では、絵刷の撮影と調書作成を行い、最終的にはデジタルアーカイブ化を目指します。本年度の前期調査は、6月23日から7月21日の毎週木曜日に実施されました。調査は正課授業の一環として行われ、同学科の増渕准教授率いる文化財科学ゼミに所属す…
明治期の千總は、刺繍絵画や友禅製品において数々の受賞を重ねましたが、その華々しい功績には多くの画家の協力が不可欠でした。画家との繋がりは、現在株式会社千總(以下、千總)に所蔵される絵画や友禅裂などの美術工芸品だけでなく、文書でも確認することができます。本コラムでは、シリーズで明治・大正時代の決算報告書類に登場する画家を紹介し、試みに当時の千總または京都の美術工芸業界のネットワークを改めて整理することを目指します(決算報告書類についての説明はこちらをご覧ください。)。第2回は、近代の京都画壇を代表する画家のひとりである望月玉泉と、京都における洋画・油絵の草創期を切り拓いた画家の田村宗立です。&n…
同志社大学美学及芸術学科の課外授業「美学芸術学実地演習II」として、講演を行いました。同学科の2回生20名が参加されました。「千總のものづくり −パトロネージュとイノベーションの歴史−」という演題をいただき、千總が460余年の歴史の中で、どのようにものづくりを続けてきたのか、歴史的背景と地域社会、学問分野や産業界との繋がりを交えて作品写真と共にご紹介しました。また会場には、明治時代と昭和時代に千總が手がけた染織品を展示しました。 千總は、室町時代に僧侶の装束である法衣や寺院を荘厳する打敷などを納める法衣商として、京都で商いをはじめました。詳細は調査段階ではありますが、六条…
千總では、友禅染の図案や法衣類の制作資料とするために集められたと思しき多数の図書を所蔵しています。その具体的な内訳については現在調査を進めている最中ですが、多くは江戸時代から明治時代にかけて出版されたもので、染織関連の版本資料として代表的な小袖雛形本をはじめとして、浮世草子、俳諧書、画手本、近代の博覧会図録など、多種多様な図書が確認されています。 とくに版本資料は近世の文化を広く網羅するラインナップとなっており、これらの図書から得られた知識が千總のものづくりに活かされたことが想像されます。千總に所蔵される図書資料を大正から戦前頃にかけてまとめた目録(『図書部購入台帳』)のうち、入手日…