活動報告 一覧

東京文化財研究所との千總所蔵工芸技術保護関係資料に関する共同調査

 当研究所では、近現代文書の悉皆調査を進めています。そのなかで、第2次世界大戦中に行われた工芸技術保護に関係する資料の現存を確認してきました。資料の代表的な例としては、当webサイトでもご紹介している「奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書」(昭和18年、19年)などを含む、「西村總染織研究所」(昭和15年設立)に関係する資料などです。当時の全国の染織業界では、日本美術及工芸統制協会などの様々な団体等による統制のもとに、工芸技術に係る製品の生産量の管理や、材料や燃料等あらゆる物資の移動制限などが実施されており、本資料はその実態の一端を示すものです。 奢侈品等製造販売に係る申請書およ…

京都市立芸術大学染織専攻による社内見学の実施

2024年5月17日に京都市立芸術大学染織専攻を対象に、社内見学を行いました。見学は「着物・着るものを知る」の実習授業の一環で実施され、同専攻の藤井良子先生率いる学部3・4回生および大学院生12名が参加しました。千總では着物等の商品企画にあたり、社内において、テーマを決定し、所蔵資料や作品から着想を得て、図案を起こしてから、外部の各職人または社内工房にて製作工程に入ることが一般的です。そのために、本見学では、着物の技術を知るだけでなく、着物づくりの背景すなわち企画から商品化に至るプロセスを知ってもらうために、千總の企画開発・図案制作・製作技術・所蔵品・展覧会について、各部署の担当者より講義しま…

産学連携事業:2023年度後期授業における絵刷調査の実施

当研究所は、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との産学連携事業として、同大学の正課授業において絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、前期授業の調査はこちらにてご確認いただけます。)。調査には主に同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生が参加し、実際に絵刷に触れながら撮影と調書作成(後期のみ)を実施しています。  撮影の様子 後期授業では、2023年10月から11月に計4回の調査を、翌年2月に千總ギャラリーの見学を実施しました。調査には、前期授業に参加した3回生と大学院1回生に加えて2回生を含む計11名が参加…

真宗大谷派 妙誓寺所蔵 染織資料調査

 江戸後期から明治頃にかけての千切屋總左衛門(千總の前身)が真宗大谷派の御用を請けていたことから、千總文化研究所では2019年度より真宗大谷派染織品資料調査を行っています。その一環として、2023年度は6月から8月にかけて、真宗大谷派妙誓寺に所蔵されている法衣装束等の染織資料の調査を行わせていただきました。 妙誓寺 外観  調査資料は31点あり、このうち袈裟類は22点、着物が1点、帯が2点、袴が2点、その他が4点でした。 調査風景  妙誓寺資料の特徴は、紋が縦横に整列する「居並び」の文様形式の袈裟が占める割合が高いことにあります。居並びの文様は現在の真宗…

産学連携事業:2023年前期の絵刷調査の実施

当研究所では、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との覚書のもとに、産学連携事業として絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、過去の調査の様子は活動報告でご確認いただけます。)。調査は同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生さんが主体となって行われるもので、絵刷の撮影と調書の作成を実施しています。 授業の様子    このたび、本年度の前期の調査が実施されました。調査では、事前に同学科での撮影実習および当研究所による絵刷や型友禅に関する講義を行った上で、6月8日、15日、22日、7月13日の計…

大阪教育大学附属天王寺中学校✖️千總文化研究所  ~着物を題材とした教科横断型授業~

大阪教育大学附属天王寺中学校様からご依頼いただき、着物を題材とした教科横断型授業の取り組みに参画しました。授業は、2年生の美術科、理科、国語科、家庭科の時間で全10回にわたり、着物のデザインと色、着物の着こなし等を、観察、実演、実習を交えて行われました。千總文化研究所は、美術科と理科の時間に千總のデザイナーと職人を講師として召喚し、実習のための着物、染色見本、染色材料と道具等を提供しました。1)美術科① 着物を「見つめる」、デザイナーの仕事を知る2)理科①色づくりについて職人から学ぶ3)理科②見本の色を再現する4)国語科①言葉の意味の違いに気付く5)国語科②名も無き色に名前を付ける6)美術科②…

KCJS(京都アメリカ大学コンソーシアム)プログラム「世界に通じる京の職人」

同志社大学内にあるKCJF(京都アメリカ大学コンソーシアム、運営:コロンビア大学)の授業の一環として、千總の歴史と染織技術について講義しました。「世界に通じる京の職人」がテーマの本授業には、日本語並びに日本文化等を専攻するアメリカからの留学生13名が参加されています。 講義の前半は、千總が460余年の歴史の中でどのようにものづくりを続けてきたのか、その歴史と地域社会や産業界との繋がりを交えて作品写真と共にご紹介しました。 現代では、着物やスカーフなどの染織品を手掛ける千總ですが、創業した室町時代に僧侶の装束である法衣や寺院を荘厳する打敷などを納める法衣商であり、時代に応じて…

「きもの科学部〜きものを科学的に探求しよう!〜」実施報告2

千總文化研究所は今年の10月から12月にかけて、「きもの科学部〜きものを科学的に探求しよう〜」と題して中学生向けの文化プログラムを実施しました。 文学、農学、工学、染色デザイン等の専門家が倶楽部の指導者となり、着物に描かれた植物や和歌、着物のデザインや色のほか、染色技術を中学校の各教科と結びつけながら、きものを様々な視点から深く体系的に学ぶプログラムです。座学だけでなく、教育工学の専門家によるワークショップを交え、分野横断型の学びを通じた子どもの想像性・創造性の育成を目指します。「きもの科学部」のプログラム趣旨・概要についてはこちら 今回は、11月と12月に開催された第3回~第5回の…

「きもの科学部〜きものを科学的に探求しよう!〜」実施報告1

千總文化研究所は今年の10月から12月にかけて、「きもの科学部〜きものを科学的に探求しよう〜」と題して中学生向けの文化プログラムを実施しました。 文学、農学、工学、染色デザイン等の専門家が倶楽部の指導者となり、着物に描かれた植物や和歌、着物のデザインや色のほか、染色技術を中学校の各教科と結びつけながら、きものを様々な視点から深く体系的に学ぶプログラムです。座学だけでなく、教育工学の専門家によるワークショップを交え、分野横断型の学びを通じた子どもの想像性・創造性の育成を目指します。「きもの科学部」のプログラム趣旨・概要についてはこちら 今回は、10月と11月に開催された第1回と第2回の…

産学連携事業:後期の絵刷調査の実施

当研究所では2021年度から株式会社千總(以下、千總)に寄贈された絵刷(えずり)調査を、京都芸術大学歴史遺産学科との産学連携事業のもとに実施しています(事業の詳細はこちらをご覧ください)。本年度の後期調査は、10月6日か11月17日の毎週木曜日に実施されました。調査は正課授業の一環として行われ、同学科の増渕准教授率いる文化財科学ゼミに所属する3回生5名および4回生1名の他、2回生6名および修士課程学生1名の合計12名が参加しました。 後期調査では、前期と同様の絵刷の撮影に加えて、調書の作成が行われました。本事業はデジタルアーカイブ化を最終的な目的としているために、この調査を通して得ら…