活動報告 一覧

〈大津唐崎図〉の本格解体修理の完了

千總とも縁の深い画家・岸竹堂による「大津唐崎図」。その本格解体修理が2022年より実施され2024年に完了しました。当研究所は、修理監理として、株式会社千總(現 株式会社千總ホールディングス)に事業の運営と指導助言の協力を行いました。 大津唐崎図とは〈大津唐崎図〉(八曲一双、絹本著色)は、右隻に雪暮の大津の町並み、左隻に三上山に臨む唐崎の松という、琵琶湖の景勝地をあらわした作品です。1875(明治8)年に制作され、翌年のフィラデルフィア万国博覧会(アメリカ合衆国)に、千總当主・西村惣右衛門(12代西村總左衛門)の名前で出品されました。千總にとっても、竹堂にとっても、これが初めての万国…

五感から知る言葉にならない日本の美

日本の文化芸術を大人が学ぶワークショップ&講演会を、2024年秋から全5回シリーズで開催いたします。第一線で活躍する表現者・技術者とともに日本の美を五感からたどり、人の感性に立ち返った文化芸術の伝承を展開します。本プログラムの収益は、当研究所が企画・開発を進める次世代育成プログラムの運営に充てられます。 【プログラムの背景と趣旨】日本には、世界に誇るべきさまざまな文化芸術があり、そこには数えきれないほどの卓越した技術が凝縮されています。日本のものづくりにみる息を呑むような繊細な美や技術が、どのように伝承されてきたものか、誰もがその物語を知りたいと願っているのではないでしょうか。一方で…

中高生向け文化プログラム「きもの科学部」を開催いたします

 千總文化研究所では、2021年度より染織技術と染織文化を題材とした教育プログラムの開発に取り組んでいます。  着物に用いられる伝統的染織技術には、デザイン構想から完成まで数十もの工程があり、その多くが手仕事による分業で行われています。多様な技術とその背景にある日本の文化は、農学、化学、人文学をはじめとするさまざまな学問分野を内包するだけでなく、より美しいもの、品質の高いものをつくりだすために研ぎ澄まされた職人の創造力と探求心が凝縮されています。   一方、昨今の学校教育の現場では、STEAM教育をはじめ学際的な学びがクリエイティブな人材を育成するものとして注目されています…

東京文化財研究所との千總所蔵工芸技術保護関係資料に関する共同調査

 当研究所では、近現代文書の悉皆調査を進めています。そのなかで、第2次世界大戦中に行われた工芸技術保護に関係する資料の現存を確認してきました。資料の代表的な例としては、当webサイトでもご紹介している「奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書」(昭和18年、19年)などを含む、「西村總染織研究所」(昭和15年設立)に関係する資料などです。当時の全国の染織業界では、日本美術及工芸統制協会などの様々な団体等による統制のもとに、工芸技術に係る製品の生産量の管理や、材料や燃料等あらゆる物資の移動制限などが実施されており、本資料はその実態の一端を示すものです。 奢侈品等製造販売に係る申請書およ…

京都市立芸術大学染織専攻による社内見学の実施

2024年5月17日に京都市立芸術大学染織専攻を対象に、社内見学を行いました。見学は「着物・着るものを知る」の実習授業の一環で実施され、同専攻の藤井良子先生率いる学部3・4回生および大学院生12名が参加しました。千總では着物等の商品企画にあたり、社内において、テーマを決定し、所蔵資料や作品から着想を得て、図案を起こしてから、外部の各職人または社内工房にて製作工程に入ることが一般的です。そのために、本見学では、着物の技術を知るだけでなく、着物づくりの背景すなわち企画から商品化に至るプロセスを知ってもらうために、千總の企画開発・図案制作・製作技術・所蔵品・展覧会について、各部署の担当者より講義しま…

産学連携事業:2023年度後期授業における絵刷調査の実施

当研究所は、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との産学連携事業として、同大学の正課授業において絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、前期授業の調査はこちらにてご確認いただけます。)。調査には主に同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生が参加し、実際に絵刷に触れながら撮影と調書作成(後期のみ)を実施しています。  撮影の様子 後期授業では、2023年10月から11月に計4回の調査を、翌年2月に千總ギャラリーの見学を実施しました。調査には、前期授業に参加した3回生と大学院1回生に加えて2回生を含む計11名が参加…

真宗大谷派 妙誓寺所蔵 染織資料調査

 江戸後期から明治頃にかけての千切屋總左衛門(千總の前身)が真宗大谷派の御用を請けていたことから、千總文化研究所では2019年度より真宗大谷派染織品資料調査を行っています。その一環として、2023年度は6月から8月にかけて、真宗大谷派妙誓寺に所蔵されている法衣装束等の染織資料の調査を行わせていただきました。 妙誓寺 外観  調査資料は31点あり、このうち袈裟類は22点、着物が1点、帯が2点、袴が2点、その他が4点でした。 調査風景  妙誓寺資料の特徴は、紋が縦横に整列する「居並び」の文様形式の袈裟が占める割合が高いことにあります。居並びの文様は現在の真宗…

産学連携事業:2023年前期の絵刷調査の実施

当研究所では、2021年度より京都芸術大学歴史遺産学科と株式会社千總(以下、千總)との覚書のもとに、産学連携事業として絵刷(えずり)の調査を実施しています(本事業と絵刷の詳細はこちら、過去の調査の様子は活動報告でご確認いただけます。)。調査は同学科の増渕麻理耶先生ゼミ所属の学生さんが主体となって行われるもので、絵刷の撮影と調書の作成を実施しています。 授業の様子    このたび、本年度の前期の調査が実施されました。調査では、事前に同学科での撮影実習および当研究所による絵刷や型友禅に関する講義を行った上で、6月8日、15日、22日、7月13日の計…

大阪教育大学附属天王寺中学校✖️千總文化研究所  ~着物を題材とした教科横断型授業~

大阪教育大学附属天王寺中学校様からご依頼いただき、着物を題材とした教科横断型授業の取り組みに参画しました。授業は、2年生の美術科、理科、国語科、家庭科の時間で全10回にわたり、着物のデザインと色、着物の着こなし等を、観察、実演、実習を交えて行われました。千總文化研究所は、美術科と理科の時間に千總のデザイナーと職人を講師として召喚し、実習のための着物、染色見本、染色材料と道具等を提供しました。1)美術科① 着物を「見つめる」、デザイナーの仕事を知る2)理科①色づくりについて職人から学ぶ3)理科②見本の色を再現する4)国語科①言葉の意味の違いに気付く5)国語科②名も無き色に名前を付ける6)美術科②…

KCJS(京都アメリカ大学コンソーシアム)プログラム「世界に通じる京の職人」

同志社大学内にあるKCJF(京都アメリカ大学コンソーシアム、運営:コロンビア大学)の授業の一環として、千總の歴史と染織技術について講義しました。「世界に通じる京の職人」がテーマの本授業には、日本語並びに日本文化等を専攻するアメリカからの留学生13名が参加されています。 講義の前半は、千總が460余年の歴史の中でどのようにものづくりを続けてきたのか、その歴史と地域社会や産業界との繋がりを交えて作品写真と共にご紹介しました。 現代では、着物やスカーフなどの染織品を手掛ける千總ですが、創業した室町時代に僧侶の装束である法衣や寺院を荘厳する打敷などを納める法衣商であり、時代に応じて…