お知らせ一覧
嵯峨本願寺は京都・嵯峨に位置する寺院で、東本願寺法主で旧華族・大谷伯爵家の蔵品を今に伝えています。なかでも染織品は近世後期以降の大谷家歴代が着用された多数の法衣装束からなり、これまで明らかにされることのなかった東本願寺における法主衣体および法服*1の実態を探るに欠かせない資料です。 当研究所では2024年4月より嵯峨本願寺に所蔵される染織品の調査を行っています。株式会社千總ホールディングスの前身である法衣商・千切屋惣左衛門が、近世後期から近代にかけて大谷家の御用を行ったことが分かっています*2が、実際の製品や制作規模など不明な点が多く残されています。今回の調査において、千切屋惣左衛…
「多世代間共創」をテーマに、株式会社Unpackedが主催するプログラム「Corp Touch. 」(於:アート&テクノロジー・ヴィレッジ京都)に参加しました。中高生と法人が課題解決策を「共創」することで、社会人と若者の双方向の理解を促すことをねらいとするプログラムです。 当研究所の他には、プログラムを共催するマクセル株式会社、産経新聞大阪本社が参画され、それぞれの課題に対して参加者の中高生が4~5名ずつグループに分かれ、活動しました。プログラムは、法人から解決したい課題を提示し、中高生から課題の現状に関してインタビュー、解決策のディスカッションを経て発表するまで、およそ3時間の中で…
現在、システムの不具合により本イベントページ内の「参加ご予約」からお申し込みができません。誠に恐れ入りますが、お申し込みは下記の内容をinfo@icac.or.jpまでお送りください。 記メールタイトル:参加ご希望のイベント名メール本文:お名前、お電話番号、ご住所、お申し込み人数(ご同伴者様のお名前もご記入ください)以上です。 お手数をおかけいたしまして誠に申し訳ありません。何卒よろしくお願い申し上げます。 なお、「きもの科学部」は、下記「申し込みフォーム」よりお申し込みください。申し込みフォーム
第1回「五感のバランスの再構築-香りがうつす日本の感性-」 畑 正高 氏(株式会社 松栄堂 代表取締役社長) 香りと人との関係は、どのようなものでしょうか。 香りは、空間に緩やかに広がり、人はその存在を目で確かめることはできず、同じ空間で同じ香りを知覚し続けることもできません。しかし香りは、抽象的な余韻を残し、人の記憶や感情の深くに働きかける存在でもあります。 古来、香りを焚く文化は、洋の東西を問わず広く用いられ、日本には仏教と共に伝来しました。以来、国内では香りの素となる天然素材を収穫できないにも関わらず、種々の香料を配合した「薫物」、香木そのものを焚…
千總とも縁の深い画家・岸竹堂による「大津唐崎図」。その本格解体修理が2022年より実施され2024年に完了しました。当研究所は、修理監理として、株式会社千總(現 株式会社千總ホールディングス)に事業の運営と指導助言の協力を行いました。 大津唐崎図とは〈大津唐崎図〉(八曲一双、絹本著色)は、右隻に雪暮の大津の町並み、左隻に三上山に臨む唐崎の松という、琵琶湖の景勝地をあらわした作品です。1875(明治8)年に制作され、翌年のフィラデルフィア万国博覧会(アメリカ合衆国)に、千總当主・西村惣右衛門(12代西村總左衛門)の名前で出品されました。千總にとっても、竹堂にとっても、これが初めての万国…
株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に遺る版本の中で、文学作品は大きな割合を占めています。前回ご紹介した和歌がその筆頭ですが、江戸時代後期に盛んに出版された狂歌集も無視できません。雅な情景を描く和歌に対して、俗なる現世を映した狂歌は江戸時代に庶民の間でも流行しました。千總に遺る狂歌集から、その世界を少し覗いてみましょう。 狂歌というと、現代の私たちにとっては俳句や川柳に比べてなじみの薄い存在に思えます。狂歌とは何か?という問いに対し、近代の狂歌研究者・菅竹浦は『近世狂歌史』で次のように答えています*1。 狂歌とは読んで字のごとく狂体の短歌であると答へる。(中略)狂歌は…
日本の文化芸術を大人が学ぶワークショップ&講演会を、2024年秋から全5回シリーズで開催いたします。第一線で活躍する表現者・技術者とともに日本の美を五感からたどり、人の感性に立ち返った文化芸術の伝承を展開します。本プログラムの収益は、当研究所が企画・開発を進める次世代育成プログラムの運営に充てられます。 【プログラムの背景と趣旨】日本には、世界に誇るべきさまざまな文化芸術があり、そこには数えきれないほどの卓越した技術が凝縮されています。日本のものづくりにみる息を呑むような繊細な美や技術が、どのように伝承されてきたものか、誰もがその物語を知りたいと願っているのではないでしょうか。一方で…
当研究所では、近現代文書の悉皆調査を進めています。そのなかで、第2次世界大戦中に行われた工芸技術保護に関係する資料の現存を確認してきました。資料の代表的な例としては、当webサイトでもご紹介している「奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書」(昭和18年、19年)などを含む、「西村總染織研究所」(昭和15年設立)に関係する資料などです。当時の全国の染織業界では、日本美術及工芸統制協会などの様々な団体等による統制のもとに、工芸技術に係る製品の生産量の管理や、材料や燃料等あらゆる物資の移動制限などが実施されており、本資料はその実態の一端を示すものです。 奢侈品等製造販売に係る申請書およ…
本コラムシリーズでは千總に所蔵される近世・近代の版本を中心とした図書資料をご紹介しています。今回はきものの文様ともつながりの深い、和歌に関する書籍についてご紹介します。 和歌の出版絵画や染織、漆工、金工など幅広い美術分野に影響を及ぼした和歌ですが、出版にもその足跡は残されています。江戸時代には三十六歌仙や百人一首、古典的物語の中の歌といった形で、和歌は版本を通して大衆にも浸透していました。 (Fig.1,2)『百人一首(後題)』艸田子編、1692年(元禄5) Fig.1,2は江戸時代中期のはじめに出版された絵入百人一首の版本です。ページの中央には天智天皇にはじまる百人一首の…
2024年5月17日に京都市立芸術大学染織専攻を対象に、社内見学を行いました。見学は「着物・着るものを知る」の実習授業の一環で実施され、同専攻の藤井良子先生率いる学部3・4回生および大学院生12名が参加しました。千總では着物等の商品企画にあたり、社内において、テーマを決定し、所蔵資料や作品から着想を得て、図案を起こしてから、外部の各職人または社内工房にて製作工程に入ることが一般的です。そのために、本見学では、着物の技術を知るだけでなく、着物づくりの背景すなわち企画から商品化に至るプロセスを知ってもらうために、千總の企画開発・図案制作・製作技術・所蔵品・展覧会について、各部署の担当者より講義しま…