図書紹介12:千總の参考品収集 *会員限定*
株式会社千總ホールディングス(以下、千總)に所蔵される古書資料をご紹介してきた本コラムシリーズですが、今回は一度全体を俯瞰し、古書を含めた参考品収集の全貌を押さえておきたいと思います。千總における古書の収集については初回コラムにて簡単に触れましたが、最近の調査活動の成果も踏まえつつ、今一度振り返ってみます。
千總の参考資料
千總には近世・近代の絵画作品、小袖をはじめとした染織品、本コラムシリーズでご紹介してきた版本・肉筆本類など、多種多様な資料を収集・所蔵してきました。特に近代になって盛んに買い集められた小袖・古裂類と古書類は、単なるコレクションではなく、商品制作の参考品とされた可能性があります。
近世の千總は寺院や武家などを顧客に抱え、比較的安定した商売を続けていました。ところが幕末・明治の動乱の中で、西洋的価値観の流入、従来商品の国内需要の縮小、画家の困窮など、様々な課題に直面することになります。
そこで、それらの問題のうちいくつかに対する解決策として、友禅染の図案改良と量産化が図られます。「目新しい」「消費者好みの」友禅染め製品を「すぐに」「大量に」開発するには、膨大な量のデザインソースが必要となります。その活動を下支えしたのが、古書や古裂類だったのです。千總に遺る収集台帳を探ることで、その収集傾向が少しずつ明らかになってきました。
中国美術への関心
千總の参考品収集台帳である『図書部購入台帳』(以下、旧目録)には、中国の染織品や書籍を買い求めた記録が多数遺ります。国内で購入したもののほか、千總関係者が中国へ出張した際に現地で買い求めたものもあるようです。
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