産学連携スタートアップ事業 令和4年度成果報告会

当研究所は、2021年度より株式会社千總(以下、千總)と京都芸術大学歴史遺産学科との連携のもと、千總所蔵資料の調査研究を進めています。

2年目となる本年は初年度に引き続き、明治・大正期に作られた型友禅関連資料「絵刷」の撮影および文様・墨書の調査を実施し、さらに新たな試みとして、明治期の当主・12代西村總左衛門に宛てられた書簡の解読を行いました。こうした調査は同科の正課授業として実施されており、絵刷調査は同学科の増渕麻里耶氏の、書簡解読は木村栄美氏の、各ゼミに所属の学生により遂行されました(本年度の絵刷調査の様子はこちらからご確認いただけます)。

 

その中間報告会として、このたび2023年4月29日に産学連携スタートアップ事業 令和4年度成果報告会を開催しました。

報告会の記録動画は、会員ページよりご視聴いただけます。

 

    

左:絵刷、中:書簡、右:絵刷撮影の様子 

 

【開催概要】

日     程:2023年4月29日(土)13:30~16:30

実 施 形 式:会場(京都芸術大学人間館 NA102教室)・オンライン配信 (zoom)

主     催:京都芸術大学芸術学部歴史遺産学科/日本庭園・歴史遺産研究センター歴史遺産研究部門
共     催:一般社団法人 千總文化研究所

プ  ロ  グ  ラ  ム:

   13:30~13:40 ごあいさつ 趣旨説明

 〈第1部〉 型友禅にまつわる人と物 

   13:40~14:00 令和4年度絵刷調査実施報告  小田桃子(千總文化研究所)
   14:00~14:20 型友禅の絵刷に使用された色材の材質的特徴について  根岸カノン(京都芸術大学大学院修士1年)
   14:20~14:40    友禅裂に使用された赤色および青色色材の分析調査報告  増渕麻里耶(京都芸術大学)
   14:40~14:55 休憩

 〈第2部〉 12代当主西村總左衛門の交流と活動

   14:55~15:15 千總12代当主・西村總左衛門 書簡から見えるネットワーク  木村栄美(京都芸術大学)
   15:15~15:35 千總の史料について  岩元綺海、佐藤瞭、吉近萌々果(京都芸術大学歴史遺産学科3年)
   15:35~15:55 シカゴ万博における千總  小田桃子
   15:55~16:10 休憩
   16:10~16:30 質疑応答

 



報告会は、第一部「型友禅にまつわる人と物」と第二部「12代当主西村總左衛門の流と活動」に分けられ、各担当者から実施概要を報告し、加えて関連資料の調査結果を発表しました。

第一部では、当研究所の小田より2021年および2022年に実施された248枚の絵刷調査の報告とともに、絵刷に記録された人名とくに型紙彫刻(型彫)の職人について発表しました。また関連資料の調査報告として、根岸カノン氏(京都芸術大学大学院修士1年)から絵刷の色材分析を、増渕氏より絵刷のエンドプロダクトとも言える友禅裂の染料分析について発表しました。

第二部では、木村氏より本年度の書簡解読の実施報告とともに、書簡を通した12代千總当主の交流ネットワークについて紹介し、一部の書簡の具体的な解読については3名の学生代表より報告しました。さらに、関連資料の調査報告として、複数の書簡に共通する1893年(明治26)のシカゴ万博における12代当主の活動について、当研究所の小田より発表しました。

調査対象となった資料である絵刷や書簡は、完成した製品からは知ることのできない、明治・大正期における千總の技術や人間関係を現在に伝えます。

本会を通して、そうした資料の存在をご紹介し、その価値について、ともに考える機会となりましたら幸いです。

 

(文責 小田桃子)