第二次世界大戦下の工芸技術保護関係資料に関する共同調査の実施
当研究所では東京文化財研究所と覚書を結び、2024年度より第二次世界大戦下の工芸技術保護に関係する所蔵資料の調査を実施しています。
東京文化財研究所の先行研究(註1)によると、昭和15(1940)年に公布された奢侈品等製造販売制限規則(昭和15年7月6日商工省、農林省令第2号/通称七・七禁令)が、昭和25(1950)年に制定された文化財保護法における無形文化財、特に工芸技術保護の枠組み形成に影響を与えた可能性が指摘されており、本調査はその実態解明の一環として実施されました。
本調査では、千總に現存する、奢侈品等製造販売制限規則の影響で制度化された、芸術及び技術保持資格の認定の制度に関する資料、およびその後の影響を示す関連資料を対象としています。
当時は、戦時体制における統制のもとに、工芸技術に係る製品の生産量の管理や、材料や燃料等あらゆる物資の移動の制限が実施されており、調査対象資料はその手続き書類や関係者の文書などを含んでいます。同様の資料は全国に現存しているとみられ、共同研究者である同研究所の菊池理予氏と共同調査者の石原真理氏はこれまでに、東京藝術大学未来創造継承センター大学史資料室所蔵の「中村勝馬関係資料」(註2)、ならびに「産業工芸懇話会報」2号および3号(いずれも個人蔵)(註3)を対象に調査を実施されてきました。
千總にのこる資料群は、京都の企業における工芸技術保護の実態の一例を示すものと言えます。
2024年度の調査以降、新たに374件の資料の選出および目録作成を行い、本年度は8月18から20日にかけて、菊池氏および石原氏とともに、同件の資料の画像記録を作成しました。
調査の過程において、当時の京都における千總の役割を示す資料や、奢侈品等製造販売制限規則や戦争による厳しい経営状況を報告する関係者の記録などが見られました。
今後は、京都の商況や関係組織の成立背景を調査のうえ、さらなる資料解読をすすめる予定です。
[参考文献] 西川友武『美術及工芸技術の保存』工芸学会、1966
註1 菊池理予、石原真理「東京藝術大学美術学部近現代美術史・大学史研究センター所蔵 「中村勝馬関係資料」から見た工芸技術保護の実態Ⅰ」『無形文化遺産研究報告』第18号、東京文化財研究所、2024
註2 菊池理予、石原真理「東京藝術大学未来創造継承センター大学史史料室(旧制東京美術学校部門)所蔵「中村勝馬関係資料」から見た工芸技術保護の実態Ⅱ―統制関連団体の実態―」『無形文化遺産研究報告』第19号、東京文化財研究所、2025
註3 菊池理予、石原真理「〈資料紹介〉産業工芸懇話会報」『無形文化遺産研究報告』第20号、東京文化財研究所、2026
(文責:小田)


