「きもの科学部」第4回活動報告
2024年「きもの科学部」第4回を開催しました。
今回のテーマは「着物に描かれているものは?ー植物編ー」です。
講師は、植物学者で滋賀大学名誉教授の木島温夫先生をお招きしました。
着物には古くから、写実的にあるいは抽象的に様々な植物が描かれてきました。その多くに、植物の生態や姿形の特徴になぞらえて長寿や子孫繁栄などおめでたい意味が込められています。
では、その植物たちはいつどこから日本にやってきて、どのような特徴を持っていて、人はどのように植物と共に生きてきたのか、知っているようで知らない植物の世界を人文科学と自然科学の視点から探究しました。
前半は、植物がもたらした文化に着目しました。例えば、菊は中国から薬草として渡来して広まり、無病息災を願う「重陽の節句」といった行事や、菊を愛でながら歌を詠む行事が平安時代に発達した一方で、江戸時代には菊の品種改良が盛んになって新種をお披露目するイベントが流行したことなどのお話がありました。
また、道端でもよく見かけるツユクサから品種改良されたオオボウシバナから採取される青い染料が、着物やお菓子、絵画、陶磁器など様々な工芸の染料として用いられ、文化を形成してきたことが解説されました。
ワークショップでは、オオボウシバナの染料は水に消えやすい特性から友禅染の下絵の工程として用いられることを解説し、実際に生地に線を描いて水につけてみたり、オオボウシバナの染料の代わりに開発された合成青花と比較してみたりしました。
後半は、植物の生態に着目しました。なぜ、植物は美しいのか、どうすれば植物の種を残していけるのかといった点から、植物と昆虫や鳥との関係性や、在来種と外来種の関係性をお話しいただきました。ワークショップでは、菊の花を実際に解体して、どのような構造になっているのか、花弁は何枚なるのか等を観察しました。
ふりかえりでは、今日の学びから考える「植物と人の未来」についてグループディスカッションをしました。
「植物は保護したり外来種を管理したりコントロールが大切」「海外と交流するときは植物の活用方法を教えたり教えてもらったりできたら良い」「身近な草花がこれまでより少なくなってきていると感じる。絶滅していく種を減らす取り組みが必要」「一時的な需要ではなく未来の問題に目を向けて植物を利用することが大切」といった意見が出ました。