「きもの科学部」第3回活動報告
2024年「きもの科学部」第3回を開催しました。
今回は、当研究所が教育プログラム開発の共同研究を進めている金沢大学から、吉武希実さん(金沢大学融合学域先導学類2年)が参加し、レビュー記事を作成してくれました。
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今回のワークショップのテーマは「五感を使って植物を観察しよう」でした。中学1年生から高校3年生までの7名が参加し、京都府立植物園を舞台に、五感を駆使して植物観察を行い、自然の魅力を体感しました。
前半は植物園ガイドの立花さんに15,000平方メートルもの広大な園内の一部を案内していただきました。植物の特徴や生活への応用例を豆知識を交えて解説されると、参加者からは「これが〇〇の材料だったんだ!」と驚きの声が上がりました。普段何気なく見過ごす植物も、鮮やかな色彩や独特の香り、表面の質感といった多様な表情を持つことに気づかされました。
中盤では「彩の丘」での自由観察が行われ、参加者たちはタブレットを使って写真を撮影したり、植物に触れたり匂いをかいだりしながら、それぞれの方法で観察を楽しんでいました。五感をフル活用したこの自由な時間は、参加者一人ひとりにとって新たな発見の場となり、自然との関わりを一層深めました。
後半は、植物編に隣接する「京都府京都学・歴彩館」に移動し、観察結果の発表が行われました。参加者はお気に入りの写真を選び、「見た目と肌触りが全然違って面白かった」など感想を共有しました。さらに、千總開発部デザイナーの今井淳裕様、手描き友禅職人の蒲池正太様、滋賀大学名誉教授の木島温夫様が専門的な視点からコメントをくださいました。
今井様は花の表情や時間の経過による変化がデザインのインスピレーションになると語り、植物が静止した存在ではなく、動的な魅力を持つことに気づかされました。蒲池様は、かつて描いたコスモスの柄について、今回の観察を通じてその美しさと奥深さを再認識したと話され、ガイドさんの解説や実物の観察を通して自身の経験を再評価する姿勢が印象的でした。
今回のワークショップでは、植物園が単なる観察の場にとどまらず、遺伝子資源の栽培や絶滅危惧種の保全といった重要な役割を担っていることを再認識しました。それだけでなく、私は植物の名前や施設の構造など視覚的な情報に注目しがちでしたが、専門家の視点を通じて、植物には色彩や質感だけでなく、時間の経過による変化や生命の複雑さがあることに気づかされました。同じ植物でも異なる視点から観察することで多様な捉え方が可能であり、そこに自然の奥深さと植物園が果たす使命の重要性があると実感しました。五感を研ぎ澄ませながら観察を行った今回の体験は、自然と向き合い、新たな発見や驚きを得るとともに、学びの意義を再確認する貴重な機会となりました。
(文責:吉武希実)
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今月から「きもの科学部」も後半に入りますが、自然科学、人文科学、社会科学の様々な視点からの科学的探究が続きます。引き続き、ご関心をお寄せいただけますと幸いです。