東京文化財研究所との千總所蔵工芸技術保護関係資料に関する共同調査
当研究所では、近現代文書の悉皆調査を進めています。
そのなかで、第2次世界大戦中に行われた工芸技術保護に関係する資料の現存を確認してきました。資料の代表的な例としては、当webサイトでもご紹介している「奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書」(昭和18年、19年)などを含む、「西村總染織研究所」(昭和15年設立)に関係する資料などです。当時の全国の染織業界では、日本美術及工芸統制協会などの様々な団体等による統制のもとに、工芸技術に係る製品の生産量の管理や、材料や燃料等あらゆる物資の移動制限などが実施されており、本資料はその実態の一端を示すものです。
奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書(昭和18、19年)
このたび、そうした資料の実態把握を目的として、国立文化財機構 東京文化財研究所と当研究所との間に覚書を結び、共同調査を開始いたしました。
第1回目の調査は6月17~19日に実施され、同研究所の菊池理予氏と共同調査者の石原真理氏とともに、194件の文書をデジタル化し、資料目録を作成しました。また昭和期文書資料の悉皆調査を行い、今後調査する資料の選定も行いました。
西村總染織研究所 代表者 西村總左衛門編「友禅染染技術保存ニ関スル陳情書」(昭和18年)
同様の資料は、千總だけでなく同時期に活動した工芸技術者や事業者により、現代に伝えられています。
本調査を通じた千總資料の活用が、第2次世界大戦下の工芸技術保護の変遷の解明に繋がることを目指して、今後も調査を継続していきます。
(文責:小田)