京都市立芸術大学染織専攻による社内見学の実施

2024年5月17日に京都市立芸術大学染織専攻を対象に、社内見学を行いました。

見学は「着物・着るものを知る」の実習授業の一環で実施され、同専攻の藤井良子先生率いる学部3・4回生および大学院生12名が参加しました。

千總では着物等の商品企画にあたり、社内において、テーマを決定し、所蔵資料や作品から着想を得て、図案を起こしてから、外部の各職人または社内工房にて製作工程に入ることが一般的です。そのために、本見学では、着物の技術を知るだけでなく、着物づくりの背景すなわち企画から商品化に至るプロセスを知ってもらうために、千總の企画開発・図案制作・製作技術・所蔵品・展覧会について、各部署の担当者より講義しました。

まずは当研究所の小田より、千總の沿革を解説した上で、現在ある千總友禅の草創期を支えた明治・大正期の友禅の文化と技術について、友禅軸の見学を交えながら紹介しました。こうした染織資料は、商品企画のリソースとなるものです。

そして、株式会社千總開発部の今井淳裕より、同部が担う着物開発の全体を管理する所謂“プロデュース業務”について講義しました。また、近年開発した実際の商品を前に、実物の技術・技法を解説するとともに、その裏に込めた開発意図をお伝えしました。

 

    

 

その後は社内施設の見学にうつり、まず訪れたのが千總ギャラリーです。

「変化が導く—検討のち、変更」展の企画者である石田直子学芸員より同展を案内し、法衣・型友禅・美術染織品に関する資料を通して、近代の千總における商品づくりの試行錯誤の軌跡を解説しました。

次に図案室、そして最後に友禅工房を訪ね、図案の製作プロセスや、下絵・糊置き・色挿しといった友禅技術の見学を行いました。今回の社内見学が実習授業の一環であることも手伝ってか、図案家や職人の解説に対して、熱心に質問する場面も見られました。

   

後日の学生方からの感想文では、現場の製作プロセスや友禅等の技術を知る一方で、そうした商品や技術を生み出す考え方にも関心を寄せてくださった様子です。

 

着物づくりは、実際に友禅や白生地や糸等の材料を製作する職人だけでなく、プロデュースや企画リソースとなる資料管理、そして営業・販売や広報など、様々な職種により成り立っており、そのために現在まで日本文化を代表する着物文化が引き継がれていると言っても過言ではありません。

 

在学中に経験した染織の技術や知識には、様々な可能性が秘められていることを、皆さんに少しでも感じていただけたなら幸いです。

 

 

(文責:小田)