中学生向け文化プログラム「きもの科学部」を開催いたします

 千總文化研究所では、昨年度より染織技術を題材とした教育プログラムの開発に取り組んでいます。

 

 着物に用いられる伝統的染織技術には、デザイン構想から完成まで数十もの工程があり、その多くが手仕事による分業で行われています。多様な技術とその背景にある日本の文化は、農学、化学、人文学をはじめとするさまざまな学問分野を内包するだけでなく、より美しいもの、品質の高いものをつくりだすために研ぎ澄まされた職人の創造力と探求心が凝縮されています。

 

 一方、昨今の学校教育の現場では、STEAM教育をはじめ学際的な学びがクリエイティブな人材を育成するものとして注目されています。そうした社会的背景のもと、染織技術やきもの文化を題材とすることで、創造力豊かな人材育成に資することができるのではないかと考えています。

 

 昨年度は函館工業高等専門学校 の下郡啓夫教授との共同研究により12回にわたるプログラム構築に取り組みました。技術革新と新しい社会価値の創造をテーマとする下郡教授の講義「グローバル・ケーススタディ」の中で、着物に描かれている模様と日本の文化、着物とその技術の歴史を多角的な視座から観察・検証、異なる染色技術の特性をテーマとしたワークショップなどを実施しました。

 函館工業高等専門学校における取り組みは、こちらからご覧いただけます。

 

 今年度は、「きもの科学部~きものを科学的探求しよう~」と題して中学生のための文化教育プログラムを、10月~12月にかけて全5回実施します。

  「きもの科学部」では、文学、農学、工学、染色デザイン等の専門家が倶楽部の指導者となり、着物に描かれた植物や和歌、着物のデザインや色のほか、染色技術を中学校の各教科と結びつけながら、きものを様々な視点から深く体系的に学びます。座学だけでなく、教育工学の専門家によるワークショップを交え、分野横断型の学びを通じた子どもの想像性・創造性の育成を目指します。

 

 

 

 

【プログラム】

第1回 色ってなんで見えるの?

日時:10月22日(土)午前10時~12時  講師:小林淳哉(函館工業高等専門学校教授・工学博士) 

 第2回 職人技ってどんな技?

日時:11月5日(土)午前10時~12時    講師:蒲池正太(手描き京友禅職人) 

第3回 着物に描かれているものは? (1)

日時:11月20日(日)午前10時~12時   講師:木島温夫(滋賀大学名誉教授・農学博士) 

第4回 着物に描かれているものは? (2)

日時:12月4日(日)午前10時~12時    講師:横山恵理(大阪工業大学准教授・文学博士) 

第5回 デザイナーってなにをつくる人? 

日時:12月17日(土)午前10時~12時    講師:今井淳裕(株式会社千總製作本部・デザイナー) 

全回のワークショップファシリテーターを函館工業高等専門学校 の下郡啓夫教授が担当されます。

 

 

 

【プログラムの教育手法】

 本プログラムでは,「きもの」に用いられる技術や描かれる模様を学問と結びつけ、科学的に「きもの」を分解します。それらを学校教育における科目と関連づけて理解できるように設計することで,「きもの」を起点としながら日常のさまざまな情報への感覚を磨き、自主的な学びの姿勢を育むことを目指します。

 一過性の体験ではなく、「きもの」にまつわる様々な事柄、伝統技術や文化を深く体系的に学ぶために、本プログラムでは「知覚」-「思考」-「実行」の段階を以下の4つのステップとして捉え,それぞれに表れている行動目標を生徒に獲得してもらいます。そのステップの獲得が,学校や日常生活に行動変容をもたらし,自律的な学びの深化へとつなげることを目標とします。

STEP1(学びの楽しさ):学ぶことの楽しさを体感する。

STEP2(知覚):伝統技術や伝統文化を題材に,自身の知覚により,新たな知識の統合の手がかりをつかむ

STEP3(思考):伝統技術や伝統文化を多面的多角的に捉え,得た知識を関連付ける力を身につけさせる

STEP4(実行):伝統技術や伝統文化を自分ごととして捉え,その伝承もしくは新たな発展性のためのシーズを発見,行動することができる。

 上記の学びを促すために、本プログラムでは、講義や実演の前後にワークショップを実施します。ワークショップではVisible Thinking を導入します。 Visible Thinking は,ハーバード大学教育大学院のプロジェクト「プロジェクト・ゼロ」で研究された学習方法で、定型的な質問を通して,学習の根源に必要である内発的なモチベー ションがどこから生まれているのかを確認し,さらにその内発的なモチベーションを起点 とした学びを可視化する手法です。学びの可視化によって自身の思考を省察することを サポートし,考える力を育てることが可能となるため、探究の基本プロセスとなる、「見通 し」-「実行」-「振り返り」の一連の過程を効果的に実施が実現できると考えられます。

 

主催:一般社団法人千總文化研究所 協力:京都市教育委員会

本プログラムは、文化庁令和4年度「地域活動推進事業及び地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」のもと実施されます。