Visible Thinking 小袖から何がわかる?

 函館工業高等専門学校の専攻科1年の授業(担当:下郡啓夫教授)「グローバル・ケーススタディ」では、千總の有形・無形の文化財を紐解く一つの手法として、ハーバード大学教育大学院のプロジェクト「プロジェクト・ゼロ」で研究された学習方法である「Visible Thinking」を用います。

 Visible Thinkingとは、定型的な質問を通して,学習の根源に必要である内発的なモチベーションがどこから生まれているのかを確認し、さらにその内発的なモチベーションを起点とした学びを可視化する手法です。学習者が自身の思考を省察することをサポートし、考える力を育てます。

 本授業では、3回の講義にわたり3つのルーチンを用いて、染織品に見られる文化的・社会的背景、染織技術を学びます。

 

 第1回目で取り上げるVisible Thinkingの思考ルーチンは、「See-Think-Wonder」です。「See-Think-Wonder」は、学習者がアート作品やトピックについて考えながら解釈できるようにするために、根拠に基づいた推論を促す方法です。

 具体的にはまず、数分間、芸術作品や画像を静かに見ます。解釈にそなえて注意深く観察し、そこに表れている事実を捉えます。その1つ1つの事実の裏付けの確認とともに,得られた事実に対する質問を提示します。そのことで,向き合っているアート作品やトピックに新たな考えがあるか省察します。

 このような学習プロセスで得られた内容をクラスメイトと共有することで、他者視点の理解と自己視点を比較し、批判的思考力を育成することを目指します。

 

11月1日の授業では、千總が所蔵する3つの小袖を題材にします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業で学生たちはどのような気づきを得られるでしょうか。

授業の様子は、追ってご報告致します。

ご覧いただいた皆様も小袖に何が表現されているのか、じっくり観察してみてください。

本事業は文化庁令和3年度の文化庁補助金「地域と共働した博物館創造活動支援事業」(主催:京都歴史文化施設クラスター実行委員会)、JSPS科研費20K02899の助成もと実施されました。

 

【参考文献】

R.リチャート/M.チャーチ/K.モリソン 著 黒上晴夫/小島亜華里 訳

『子どもの思考が見える21ルーチン』 2015年 北大路書房