染織技術から学問とクリエイティビティ、社会とのつながりを学ぶ ー高校生のための新しいプログラム開発ー

 千總文化研究所は、株式会社千總が所蔵する美術工芸品や同社が制作する製品の染織技術などの有形・無形の文化財を教材として、北海道の函館工業高等専門学校と共にSTEAM教育プログラムの開発を進めています。

 

 人の手仕事による、着物を中心とした伝統的な染織技術は、農学、化学、人文学、史学をはじめとする様々な分野の学問を内包するだけでなく、繊細で創造性に富んだものです。一方で、人の情報処理能力を遥かに超える人工知能でも、到達への道筋が見えていないものが創造性や感性が必要な分野だと言われています。

 伝統的な染織文化がもつ豊かな感性と表現の力を基盤とした創造性育成の方法論を検討することは、次世代の人材育成に必要不可欠と言えるでしょう。

 

 上記のような考えの元、感性や表現の内外にある人間の思想・英知を観察する力を醸成し、創造性、次世代の課題を解決する力を育む教育プログラムを、函館工業高等専門学校の下郡啓夫教授と共同で設計いたしました。

 

 その教育プログラムは、下郡啓夫教授の授業『グローバル・ケーススタディ』において、2021年9月から2022年2月まで15回にわたって試験的に実施されます。手法としては、Visible Thinking(ハーバード大学教育大学院のプロジェクト「プロジェクト・ゼロ」で研究された学習方法)や知識構成型ジグソー法(東京大学CoREFにより開発された授業法)を用います。

 学生の主体的な学び、分析・観察力を高め、創造力豊かな人材育成を可能にする、新しいプログラムを目指します。

本事業は文化庁令和3年度の文化庁補助金「地域と共働した博物館創造活動支援事業」(主催:京都歴史文化施設クラスター実行委員会)、JSPS科研費20K02899の助成もと実施されました。