「真宗大谷派の法衣装束の調査報告会・研究会」

真宗大谷派の法衣装束の調査報告会・研究会

日時:2021年7月9日(金)14時〜16時  オンライン形式にて

 

 千總文化研究所では、千總が「御装束師 千切屋惣左衛門」として法衣商を営んでいた歴史から、真宗大谷派の寺院を中心に袈裟や道服などの法衣や打敷をはじめ御堂を荘厳する染織品の調査研究を進めています。

 2019年度は、真宗大谷派・姫路船場別院本徳寺所蔵の染織品、千總収蔵の染織品図案と文書類の調査を実施。2020年度は、前年度に引き続き本徳寺所蔵の装束に加え、大谷家に伝わる装束を調査しました。

 本研究会では、その報告とあわせ、本調査の共同研究者であり、長年にわたり尼門跡寺院を研究されてこられたモニカ ベーテ先生にご講義をいただきました。

 そして、真宗大谷派圓正寺ご住職の山口昭彦先生、2010年より本徳寺の染織品、文書類を調査し、その成果を展覧会等で発表なさってこられた同朋大学文学部教授の安藤弥(わたる)先生から、寺院の文化、宗教学の点から今回の調査結果にご見解をいただき、また真宗大谷派姫路船場別院本徳寺 列座でいらっしゃる本谷廣氏には、本徳寺で実際に文化財の保管管理を担当されているお立場からお話をお聞きしました。

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第一部・調査報告と講演

調査報告:真宗大谷派の法衣装束と千切屋惣左衛門 2020年度調査報告

一般社団法人千總文化研究所 所長 加藤結理子

 

講演:祈りの形ー尼門跡寺院と真宗大谷派寺院に伝わる染織品をめぐってー

中世日本研究所 所長 モニカ ベーテ

 

第二部・ディスカッション

コメンテーター: 安藤 弥(同朋大学文学部 教授)

        山口昭彦(真宗大谷派圓正寺 住職)

        本谷 廣(真宗大谷派姫路船場別院本徳寺 列座)

コーディネーター:加藤結理子(千總文化研究所 所長)

 

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研究会での調査報告・講演・ディスカッション内容は、以下PDFにてご覧いただけます。

 

調査報告:真宗大谷派の法衣装束と千切屋惣左衛門 2020年度調査報告

https://icac.or.jp/public/wp-content/uploads/2021/07/houkoku.pdf

 

講演:祈りの形ー尼門跡寺院と真宗大谷派寺院に伝わる染織品をめぐってー

https://icac.or.jp/public/wp-content/uploads/2021/07/inorinokatachi.pdf

 

第二部・ディスカッション

https://icac.or.jp/public/wp-content/uploads/2021/07/discussion.pdf

 

 今回のテーマは、豊かな装束の文化がどのように伝えられてきたのかを知り、それを今後に生かすことでした。伝法衣の伝統を有する尼門跡寺院に対して、真宗大谷派においては装束は一代限りとするも、再分配の流れはあり、寺の文化全体としても未来に伝えてゆくべき、伝えてゆきたいものであることが感じられました。

 墨書には「潤色(じゅんしょく)」つまり染め替えをした、あるいは仕立て替えをした、との文言も見られました。これも装束を大切にする一端かと思われます。

 モニカ ベーテ先生からは「人から人へ物が伝わるのは日本の社会の中で大切なこと。昔から母から娘へ、小袖も一代ではなく何代にも受け継がれる、それが日本人には自然なことであるので、お寺での事象の前提としても考えるべき」とのご意見もいただきました。

 本徳寺で文化財の保管管理を担当されている本谷氏からは、歴代の装束がこれだけ遺っていた事実にあらためて驚いたこと、装束には染織品としての技術のみならず本徳寺の歴史が遺っているものと感心したこと、今後も遺してゆけるよう努めるとともに、さらに調査が進むことを期待する、との言葉を頂戴しました。

 こうした装束の調査では、製作年や製作者がわかったとしても、実際にどのようにつくられ、どなたが着用し、どのように伝わってきたのか、全容を把握するのがいかに難しい作業であるのか、あらためて痛感いたしました。同時に今後も分野の異なるご専門家とご一緒し、学際的研究を深めてゆく意義を再確認し、意欲をあらたにしております。

 

 千總文化研究所では、こうした装束を含め、着物に集積する記憶を記録する活動を幅広く行ってまいります。引き続き皆様からもご関心をお寄せいただきたくお願い申し上げます。

 

会員ページにおきましては、研究会の記録動画も公開しております。

https://icac.or.jp/private/

また、本調査の全容については2022年4月発行予定の当研究所『年報』第3号に掲載いたします。