型友禅関連資料の調査に関する産学連携事業
近年、明治時代から昭和時代にかけて制作された型友禅染の関連資料「絵刷」147冊(約14700枚)が株式会社千總に寄贈されました。絵刷とは、型紙を用いてデザイン(文様)を紙に摺り出したもので、型友禅をつくる工程において、職人による型紙の彫り具合(彫口)の確認や、型紙管理者による文様の見本として用いられるものです。
千總文化研究所は、そうした絵刷資料の保存と記録作成、さらにアーカイブ化を最終目標に掲げ、令和3(2021)年度より京都芸術大学と覚書を結び、共同調査を開始しました。
(8月28日(土)から千總ギャラリーにて、本調査の成果の一部を展示いたします。詳細は文末にてご確認ください。)
絵刷は、文様が摺り出された紙(本紙)約100枚が冊子体に綴じられています。各冊子により大きさは異なりますが、寸法は縦約30~43cm、横約45~86cm、厚み約2.5~3cmです。ほとんどの本紙には、日付や氏名さらに文様の名称を記した墨書、ならびに西村總所蔵印や組合に関する印が付されています。また、一部の本紙には、染色工程や色指示などの製作工程に関するメモ書きを確認できました。
これまでに、6月23、24日、7月1、8、15日の計5回にわたり調査を実施しました。調査は正課授業の一環として実施され、同大学歴史遺産学科の増渕麻里耶准教授率いる文化財科学ゼミ所属学生、19名(23日のみ)、10名(24日以降)が参加しました。
今回の調査は、弊所研究員の小田が千總の型友禅に関する講義と、資料の取り扱い実習を行ったうえで、学生主体で実施されました。具体的には、各冊子への資料番号の取り付け、全147冊の表表紙・裏表紙、計294点の簡易的な写真撮影、さらにそのなかから選んだ3冊について各本紙の表と裏、計670点(335紙)の写真撮影などです。最終日には、絵刷への理解を深めるために、学生ひとりにつき3枚の本紙の文様や墨書について調べ、発表する機会を持ちました。
本調査を通じて、対象の絵刷の画像記録を作成することにより、共通する墨書の内容や印、百貨店など外部組織との関わりなど、型友禅製作に関する情報の一端を把握することができました。さらに、学生の調査と所内調査により、合計で42点の絵刷の文様が千總所蔵の型友禅裂と一致することがわかりました。今後も、明治・大正・昭和期における千總の型友禅製作について明らかにすることを目的に、墨書と印の内容や、絵刷の文様などについて体系的整理を行う予定です。
毎回、授業後には学生を対象にアンケートを実施して、感想や質問などの意見を交換しました。その中では、実際の資料を調査する喜びや難しさ、また日本の伝統工芸や伝統的文様の奥深さに対する興味など、様々な意見が見られました。大学内の講義で学んだことを活かす場を提供できるよう、後期以降も同様の授業を実施いたします。
本活動を通して、研究の深化に繋げるだけなく、文化財に関する専門家育成への貢献を目指します。
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なお、本調査の成果の一部が、8月28日(土)から千總ギャラリーにて開催される、「歩み始めた図案」展でご覧いただけます。
千總所蔵の型友禅裂や絵画と共に、今回の調査で明らかとなった絵刷の関係資料も展示いたします。開館時間など、詳しい情報は下記の公式サイトにてご確認ください。
千總ギャラリー | 歩み始めた図案 Reviving Yuzen design|お知らせ|千總本店|千總 – 公式サイト – (chiso.co.jp)
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