桶出し絞りの道具調査

今、多くの伝統技術の継承が危ぶまれています。そしてその道具を作る技術も失われようとしています。多彩な染め分け表現ができる「桶出し絞り」もその一つです。

千總文化研究所では、「桶出し絞り」の技術と道具について、ヒアリング調査進めています。

 

桶出絞りとは?

上下に蓋がある桶を使用し、染める部分を桶の外縁に沿って細密に固定し、染めずに残す部分を桶の中に入れ、桶の上下の蓋を固く緊縛し、桶自体を染液につける技法です。

 

 

 

比較的大きな面積を、様々な形に多色に染め分けることができ、模様の輪郭に縫い目を施して絞るため、凹凸のある独特な風合いが特徴です

 

大正の終わりから昭和のはじめ頃に開発されたと伝わっています。それまでの染め分けは、帽子絞りと呼ばれる技法を用いて表されていました。桶出し絞りによって、より複雑な模様が効率よく絞り染めできるようになったといいます。

同じ色の部分を絞っては染めて、を色の数だけ繰り返すため、桶は、桶出し絞りの職人さんと、浸染の職人さんの工房を何度も行き来します。

 

 

道具について

桶出し絞りは、縄を用いて桶を締め上げますが、さらに硬く密閉するために、桶を浸染する前にも一度水に浸けます。そうすることによって、桶の木材と縄が膨張し、より硬く締まるのです。自然の素材の特性を活かした技術といえます。

材料は檜です。日陰で育ち目の詰まった日本の檜で作られた桶が質が良いという職人の方もおられました。日本産の入手が難しくなった折に、外国産で試されたそうですが、持ちが良くなかったそうです。

桶だけではなく、桶を締め付けるための麻の縄も、以前より品質が落ち切れやすいそうです。桶の淵に針を打ったり、締め上げたり、道具に負荷がかかる技術であるため、作業に耐えうる強度を持った良質な素材が必要といえます。

 

お話を伺った桶出し絞りの職人の方が、桶を仕入れておられた方はすでに廃業されていました。当時は漬物用の桶を製作していて、同じ技術で桶出し絞りの桶を生産していたが、近年では漬物もプラスチック製の桶を用いるようになり、また着物の生産量も減ったことが理由とのことでした。

そのほか、生地を桶に止め付ける針も特注ですが、桶出し絞りの着物生産量が減ったことから針のロットが少なくなり、作るのが難しくなっているといいます。

桶出し絞りに用いられる針:針穴のない特殊な形状

染織の技術を持つ職人の方も減少していますが、使われている道具もそれに伴い減少の一途を辿っているのが現状です。

今後は、桶をはじめとする道具の生産者と道具に用いられている素材の調査を進めてまいります。