「五感から知る言葉にならない日本の美」第2回開催報告

千總文化研究所は、次世代育成支援を目的として、日本の文化芸術を大人が学ぶ体験型プログラムを、2024年11月からスタートしました。第一線で活躍する表現者・技術者をお招きし、五感をテーマとしたご講演と感性や感覚に立ち返って文化芸術を深く知る体験をご提供するプログラムです。本プログラムの収益は、当研究所が企画・開発を進める次世代育成プログラムの運営に充てられます。

 

 第2回は、サントリー株式会社チーフブレンダーの福與伸二様にご登壇いただき、サントリー山崎蒸溜所にて開催いたしました。

本回は、福與様のご解説による山崎蒸溜所見学とご講演、ウイスキーのテイスティングとブレンディング体験にて約2時間のプログラムとして実施され、29名の方がご参加くださいました。 

 

 

 

まず、サントリーの歴史と、なぜ山崎の地に蒸溜所を建設したのかについて、ウイスキーに欠かせない良質な水とその気候風土から解説いただきました。 

 ウイスキーづくりの工程を簡単にご紹介いただいてから、蒸溜所の見学へ。

 

 

「糖化、発酵、蒸溜、貯蔵のそれぞれの工程で異なる香りや温度に五感を傾けてみてください」と話す福與氏。

 

プログラム後半、ウイスキーのテイスティングとブレンディングでは、同じ製造年で蒸溜所や樽材の種類などが異なる5種の原酒を用いて、香りと味わいの違い、そしてその背景にある「自然とクラフトマンシップ」を体感いただきました。 

 

 

福與様に原酒の特徴をご解説いただきながら、参加者の皆様にはそれぞれの原酒から感じたことを言葉にすることにチャレンジいただきました。 

 

 

「言葉にしないと伝わらないことも、言葉にするから伝わらないことや見落としてしまうこともあります」と、ブレンダーの創造性と言葉の関係性について示唆に富むお話もいただきました。

 

 

本プログラムは、デジタル技術によって様々な事柄を容易に他者と共有できる現代への問いとして、共有と共感の次元を転換する試みでもあります。

「言葉にならない」ほど感覚的なこと、けれども人の創造性に深く根ざし、文化を次世代に繋ぐために大切なことを皆様と共に考えていきたいと願っています。

 

次回は、代々奈良で螺鈿の漆芸を手がけてこられた小西寧子 氏をお招きし、2025年4月19日に開催いたします。プログラム詳細はこちら

ご関心お寄せいただけましたら幸いです。

 

 

Photo by Mitsuru Wakabayashi

 

 

【千總文化研究所が開発を進める次世代育成プログラムとは】

千總文化研究所は、2021年より次世代育成のための教育プログラムの開発を、教育工学の専門家の指導のもと進めて参りました。2022年には、染織技術、色や模様など着物に関わる事柄を学校で学ぶ科目と結びつけ、学問分野を横断した学際的な学びを提供する課外プログラム「きもの科学部」を京都市教育委員会の協力のもの設計・実施いたしました。

次世代を担う子どもたちには、学問と社会と文化のつながりや自然と人間の関係性から、未来を考える力を身につけてほしいと考えています。

今回の収益により、中学生・高校生のための課外プログラム「きもの科学部」を実施するのほか、国内外の教育機関・専門家と連携した異文化交流や教育教材開発への展開を進めます。着物以外の分野への応用も視野に、文化芸術を題材とした次世代の創造力や思考力育成プログラムの社会実装を目指して参ります。

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