近現代の商い
Adapting the Business to the Modern World
概要Overview
東京遷都と天皇東幸を境に変革を迎える京都美術工芸業界にあって、西村は友禅染を事業の主体に据えました。12代西村總左衛門は画家らに友禅商品の下絵を依頼しデザインを刷新します。以後、美術染織品、洋服、型友禅など多様な商品を製造し、国内外に販路を拡大しました。大正時代までに貿易店や東京店が立ち上り、千總として組織は拡大しましたが、時代は世界恐慌、太平洋戦争を迎えます。激動の時代の中で、友禅技術の向上と品質維持に取組んだ活動の軌跡をご紹介します。
The scene of arts and crafts in Kyoto went through a profound change when the capital and the Emperor moved to Tokyo. The Nishimura family placed yūzen dyeing at the core of the production method. Nishimura Sōzaemon XII commissioned artists to paint sketches that would prompt a renovation in the design of yūzen dyeing products. Thereafter, a large variety of products, including ornamental textile, western style clothing, and kata-yūzen (yūzen textiles dyed using paper patterns) were distributed to newly opened national and international markets. During the Taishō period (1912-1926) Chiso grew with the establishment of the foreign trade branch and the Tōkyō branch. However, the Great Depression and World War II would soon follow. In these rapidly changing times, renewed efforts were required to improve the yūzen dyeing techniques and to ensure that product quality was maintained.
所蔵品の紹介
- 看板 宮内省御用達 京都 西村總左衛門
- 御用商売鑑札
- 商標
- 写真 西村貿易店
- 写真 西村貿易東京支店
- 写真 千總友禅工場(蒸し)
- 御物裂模写
- 絹本雛形
- 図案 杉樹と熊
- 帛紗図案
- 洋服地図案集
- 雛形観古畫鑑
- 西村總左衛門商店紹介パンフレット(英文)
- 西村貿易関係資料の内、棚卸表
- 奢侈品等製造販売に係る申請書および許可書
- 松竹梅海老注連飾り裾模様
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絹本雛形 手鑑1冊 / 絹本墨画淡彩 / 明治時代 / 42.8×28.4 (cm) 絹本絵画を収めた手鑑。用途や年紀などは不明だが、花鳥画や風景画を中心に、多種多様な画風と画題を墨画淡彩で描いている。中には、東本願寺阿弥陀堂飛檐之間に納められている岸竹堂による襖絵〈桜孔雀図〉(1895)、また菊池芳文の桜花と烏、木島櫻谷の鹿を思わせるような、構図、筆さばき、色合いを持つ絵も含まれている。友禅や美術染織品などの商品の企画・製造にあたって当時の西村の画工が、近代京都画壇の日本画から多くを学んでいたことが伺える。 |
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帛紗図案 手鑑各1冊ずつ / 紙本著色 / 明治-大正(19-20世紀初期) / 小型帖 (上) :29.5×26.5 (cm)、大型帖 (中、下):79.0×35.0 (cm) 袱紗用の2種類の図案帖。明治時代以降、袱紗はお土産として国内外で人気を博しており、同様の図案帖がコレクションに複数存在している。本ページで表示されているのは、「西村總所蔵」「図案用紙」と印字された用紙に描かれた小型の図案帖と、大型の手鑑帖である。小型の図案帖の、左頁は『枕草子』の「香炉峯の雪」における清少納言を、右頁は乳飲み子の牛若を抱えて子供たちと雪中を逃亡する常盤御前を表す。大型の図案帖で表示した作品は、高砂の尉(じょう)と姥(うば)を描いた、「景年」の墨書のある絵や、竹堂の墨書と四角形の印形が記された富士山の図案を収録している。特に後者は、定番の図案だったのか、「竹堂富士」との名前が付けられている。景年は今尾景年(1845-1924)、竹堂は岸竹堂(1826-97)を意味すると思われ、本図が画家自身の手によるものかは定かではないが、帛紗など幅広い商品企画に日本画家が関係していたことを指し示している。 |
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雛形観古畫鑑 冊子1冊 / 紙本墨画(一部著色) / 大正4(1915)年編集 寺院の金具、墨蹟の文字、古典絵画に描かれた調度品、浮世絵など、様々な文化財に関する意匠が丹念に模写されており、本書はそうした摸本を、スクラップブックのように収めた画帖である。絵巻画中の高盛や烏帽子、国宝〈鳥獣人物戯画〉の見返し、重文〈大円山形星兜〉の描き起こし図など、様々な作品の摸本が掲載され、文化財のアーカイブとしても興味深い。本画帖は大正4(1915)年に千總商店の図書部により再編集されており、当時の図案作成に際する、実際の絵画や書跡や工芸品を対象とした意匠学習や、近代日本絵画に限らない古典的意匠への注目の様子が伺える。 |
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