[シリーズ:京都のまちの中の三条室町]第3回特別鑑賞会・講演会 千總が伝える地域の記憶

現在、京都市中京区に位置する御倉町は、平安時代は皇族や公家の邸宅として、鎌倉時代以降は一貫して商業都市として栄えました。御倉町が祇園会においては少将井神輿を舁く駕輿丁(かよちょう)たちを出す轅町(ながえちょう)としての役割をもち、また「やうゆう山」を出したとも伝えられているのも、御倉町が経済的に卓越した都市であったことを物語っています。
千總の前身とも言える千切屋は、このような京都でも屈指の町勢を誇る御倉町に拠点を置き活動してきました。千切屋の法衣商としての側面は知られていますが、その他土倉として、公家の家来として、朝廷の役人としての姿をもちます。
本会では、千總に遺された古文書を通して室町時代より築かれてきた千切屋と三条御倉町地域の関係をひも解きながら、京都の地で培われた町と人との豊かな関係をたどります。
講師には、永らく中世以降の京都の地域共同体について研究され、2020年に「町のちから 三条御倉町文書の世界」展を企画された西山剛氏(京都文化博物館)をお迎えします。

【イベント概要】
日時:2023年12月21日(木) 14:00~15:40
講師:西山剛
実施形式:株式会社千總5階ホールおよびオンライン(zoomウェビナー)
〈ご来場〉 定員:30名 / 参加費:[一般] 3000円、[学生] 2500円
〈オンライン参加〉 定員:100名 / 参加費:[一律] 2000円
配信方法(予定):オンライン参加に申し込んだ方を対象にリアルタイム配信の他、3週間後(予定)に期間限定で公開いたします。
千總文化研究所公式ウェブサイトの会員ページにて動画を公開いたします。
※閲覧には会員登録が必要です
応募方法:千總文化研究所公式ウェブサイト内イベントページ
申込期間:
〈ご来場〉11月3日(金)〜12月14日(木)
〈オンライン参加〉11月3日(金)〜12月18日(月)
【講師プロフィール】
西山剛 (京都府京都文化博物館学芸員)
文学博士。専門は日本の都市社会史であり、永らく中世の日本や京都の身分制度に関する研究を重ねている。
これまでに、特別展「織田有楽斎」(2023年、京都文化博物館・サントリー美術館)や企画展「町のちから 三条御倉町文書の世界」(2020年、京都文化博物館)など、多くの展覧会を担当。近年の著作には「北野祭礼神輿と禁裏駕輿丁」(『世界人権問題研究センター研究紀要』第26号、2021)、「近世北野社の一視角 「洛外名所図屏風 北川家本」の紹介」(『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』第88号、2020)、「中世の駕輿丁と行幸」(『民衆史研究』第99号、2020年)などがある。
▼当日展示資料
近年の調査で新たに発見された、室町時代の古文書を初公開します。資料は三条通の家を売却するための証書で、京都市内としては最古級と考えられます。講演会ではこれらの資料の読み解くとともに、会場に実際の古文書を展示します。その他にも、轅町の活動を示す御倉町に関する文書をご覧いただけます。

■近年の調査で新たに発見された室町時代の古文書。沽券状(こけんじょう)とは家屋敷の売買の際に交わす契約書の一種であり、本資料は井川新右衛門尉が三条通の家をお理阿へ売渡す旨を記した証書です。現在の千總には、「大切成書物」のひとつとして伝わっており、入手背景や役割は定かではないものの、三条御倉町地域と千切屋との繋がりを示す重要な文書と考えられます。

祇園社の修理事業に際して、文政2年から文政4年までに御倉町が取りまとめた寄附帳簿。寄附者には、三文字町や甲屋町などの町や個人の名が多数記されています。文政期の祇園社本殿の修理に関するものと思われ、本資料からは祇園社を支える轅町としての御倉町の姿が垣間見えます。
【シリーズについて】
シリーズ「京都のまちの中の三条室町」
古来、千總は三条室町の御倉町を主な活動拠点としてきました。千總には、土地や建物または行事など、町に関係する資料が現存しており、近世に当主が御倉町の政にも関与していたことが近年の調査で明らかとなりました。そこからは、京都で長く商いを続けていく上で、町との関係が不可欠であったことが窺えます。
本シリーズでは町に関する資料を取り上げることで、千總の商いを育んだ三条室町という地域について学び、千總のみならず地域の営みへの理解に繋げることを目指します。